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書評:カナダ・エスキモー(極限の民族)
1963年の夏、カナダ北東部のエスキモー(イヌイット)集落に長期滞在したドキュメント。

シリーズ:ニューギニア高地人 アラビア遊牧民


(上記リンクは朝日文庫版だが、実際に読んだのは講談社文庫版)
日本人とそっくりな顔立ちだが、全く異なる文化を持つカナダエスキモー。見渡す限りの雪と氷が続く大地、白夜と極夜が交互に支配する天空という、人類の生活圏として最も単調といえる世界に生きる彼らに迫った迫真のルポルタージュ。

農耕にも牧畜にも適さない北極圏に住む人々は、おそらく他のあらゆる民族より狩猟の比重が高いことだろう。著者は彼らの狩りに同行し、生肉などの彼らと同じものを食べ、同じ暮らしをして、その文化を克明に書き留める。通説やロマンティシズムに染まらない冷静な分析が興味深い。

総合的な狩猟の名人でリーダー格のイスマタ、射撃の達人にしてムードメーカーのムーシシ、狩りは苦手だがインテリであるカヤグナという、3人組のキャラが立っているので読んでいて面白い。もし自分が北極圏を舞台にした物語を書くとしたら間違いなく彼らを使うだろうなぁ。

・獲物を仕留めたらすぐに解体する
 (凍ってしまうため)
・仕留めるときは場所に注意する
 (海に落ちたりして回収不能になるため)
・可能ならキャンプ近くに追い立ててから仕留める
 (運搬の手間を減らすため)
…などというリアルな狩猟の豆知識は、まるで「モンスターハンター」の攻略法のようでゲーマー的には興味深かった。

筆者が滞在した時期は、この地方の人々の伝統的な暮らしや価値観が残る最後の時代だったようだ。急激な貨幣経済の浸透や、酒や煙草の蔓延によって荒廃してしまった「その後」は何とも悲しい。

関連リンク:
地球異変余録 カナダ編
夢の再会-『カナダエスキモー』再訪
45年後のルポ。カヤグナさんがご健在とは!
イヌイットを取り巻く状況も、少し前よりだいぶ良くなっている模様。良かったなあ本当に。

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