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書評:白い犬とワルツを
最愛の妻を亡くした老人の前に現れた不思議な犬。老人は犬とともに小さな旅に出る。


舞台は1970年代アメリカ。まず田舎の素朴な生活感がいい感じ。主食は毎日焼いているビスケットやオートミール。おんぼろトラックに揺られて今日も畑仕事。世話焼きな子供たちとお手伝いさん。

完全な創作ではなく、作者自身が作者の父親の心境を想像して、物語として膨らませたものだという。「父がボケた」と思っている子供達をよそに、当の父親自身は子供たちをからかっている、という設定に複雑な感情を読みとれる。そうしたやりとりを、どちらかといえばコミカルなタッチで描いているのも辛気臭くなくて良いな。同じようなコミカルな場面として、聖書に突っ込みを入れるのも好き。敬虔な信者でもカインの嫁の出自やノアの箱船の積載量に疑問を持つのか。

真面目で頑固な老人の一度だけのわがままで、こっそりと犬だけを連れて同窓会に行くシーンが一番の見所か。なんというか男のロマンみたいなものを感じる。男はいつまでも昔の恋を忘れられない生き物なんだ、きっと。

旅が終わってからの展開が急すぎるような気がしたが、老いて衰えるというのはそういうものなのかも知れない。友人達が次々に亡くなっていく寂しさも行間から伝わってくる。(全くの私事だが、昨年末に祖父母の住所録の整理を手伝った時、鬼籍に入った人を何人も確認した。口には出さずとも寂しかっただろうなぁ)

「泣ける」というほどではなかったけど、しんみりした気分になれた小説。歳をとったらまた読んでみたい本かも。

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