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書評:どうぶつ命名案内
動物の命名を皮切りに、ペットと人間の関係や、動物園の歴史に触れる。


筆者は多摩動物公園の飼育員。ペットが家族の一員と呼ばれるようになって久しいが、名付けに関しては未だに人間と同格とは言えないペットたち。彼らの名前から人間と動物との関わり合いを探る。

タイトル通りの意味で、ペットの名前集みたいなものを期待すると拍子抜けするかも知れない。名付けそのものより、名付けを通して見えてくる物事に関する本。

表紙は犬と猫ということもあって、この本を買った人のほとんどはペットの名付けの参考にしようと思ったはずだが、ペットに関する部分は本全体の1/4程度。残りは動物園における命名事情や、多摩動物公園の飼育日誌となっている。

まずペットの名前について。獣医から収集した2002年のデータを中心に分析。犬と猫では、犬の方が新しい名前が多く人間の命名に近づく傾向がある一方で奇抜過ぎる名前が少なく、猫の方が伝統的な名前が多い一方で突飛な名前も見受けられる。この事から、猫は犬に比べて名付けが比較的いい加減であることが分かるという。なるほど。猫は犬と違って登録も不要なので、ペットとしての意識が低い傾向にあるようだ。

その他にも時代や品種別に名前の傾向を比べてみたりしているのが面白い。「ポチ」がフランス語の「petit」由来ってのは民間語源臭いけど(例えば「ブチ模様」とか「ぽち袋」からの連想とは考えられないのか?)。ただし過去の犬の名前の例がほとんど伝わっていないみたいだから何とも言えない。

動物園の動物の名付けに関しては、名付けというより日本における動物園史がメインになっている。日本にその動物が初めてやってきたのはいつか?といったところから始まるので博物学的な面白さがある。

動物園で飼われるような貴重な動物の命名は、すなわち個体の識別による血統の管理という切実な問題と結びついている。特に繁殖が安定してくると系統だったネーミングが必要になってくる。上野動物園のニホンザルの命名規則は必見。一方「飼育や観察は学術的・客観的に行われるべきであって、名付けなどによる感情移入を排除しよう」という時代があったことが意外だった。

特別収録(といっても本書の半分近いが)の飼育日誌は単純に読んでて楽しい。動物園に行きたくなること必至。一人の飼育員でもするべき仕事って多いんだなあ。

このように内容はペットと動物園に絞られる。家畜や競走馬などのネーミングにはほぼ触れていなかったのがちょっと残念である。

内容自体はすごく面白くて興味深いんだけど、ちょっと売り方を間違えた気がする。あるいは別の本として出すものを一冊にしてしまったのか。せめてタイトルを変えられなかったのかな。

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