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映画評:(ハル)
パソコン通信発、「はじめまして」で終わるラブストーリー。


今より少しだけ昔。モニターの中の「RT」の文字が、「リツイート」ではなく「リアルタイム(チャット)」を意味した時代の話。

都会の雑踏を背景に、同じ時間の出来事であろう、とあるフォーラムで流れるリアルタイムチャットが字幕で映し出される。話題は映画について。チャットの文字を洋画の字幕に例える初心者は、あたかも今現在「字幕付き映画」を観ている視聴者に対するメタなイメージを与える。

そんなこんなで始まる(ほし)と(ハル)の物語。お互いに恋愛で傷を負った者同士。たわいもない話、傷心を隠す嘘、悩みの告白。メールのやりとりを繰り返すうちに、お互いがかけがえのない存在になっていく。

ハッピーエンドで終わることはわかりきっているから、観ていてニヤニヤが止まらない。(ハル)の不器用さもかわいらしいけど、(ローズ)の存在が色んな意味でずるい。こんな「妹」が欲しい。それにしても登場人物が全体的にプラトニック過ぎる気がする。純愛ものだからいいのかな。何と言ってもキスシーンすら無いのだ。

走る新幹線の窓越しに、お互いがビデオカメラ片手にハンカチを振りあうという初対面のシーンは、現実離れしてるけど映画としては記憶に残る絵。背景・小物で印象的なのは次の展開を示唆する電光掲示板の天気予報。村上春樹の小説やエスニック方面の料理がたびたび登場するのも何かの暗示か。

パソコンを扱った作品としてはちょっと特殊だったのは、パソコンの画面を一度も映さなかったこと。メールやチャットの文章も、ドットフォントではなくテレビのテロップなどで使われる普通の文字で表示される。キーボードをカタカタ叩く効果音とともに1文字ずつ表示されるようなありがちな演出もないし、メールの本文を役者が音読することもない。現実パートと入れ替わりで、無地の背景に静かに表示される無機質な文字は、映画全体をしっとりと引き締めている。

全体的にバブルの残り香が漂っていたが、公開は1995年と意外に遅い。パソコンの画面を出さなかったのは古臭さを出さないためだったのかも(Windows95が出てるのに、DOSのCUIで「新時代のラブストーリー」では格好が付かないからね)。

余談だが、VHS版発売当時の購入者プレゼント(各抽選1名)
(ほし)賞:IBM Apevia
(ハル)賞:IBM Thinkpad
いずれも、最新機種とのことだが具体的な型番は不明。

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