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書評:ウィザードリィ日記
SF作家・翻訳家の矢野徹が60歳を過ぎてからパソコンに挑戦!自由奔放過ぎる日記。

(右は電子書籍版)
63歳でウィザードリィを知り、パソコンを買うところから始まって、最終的にはシナリオ2までクリアする。タイトルこそ「ウィザードリィ日記」だが、実際にはWizと直接関係のないパソコン関係の話や、本業である小説や翻訳の話、あるいは文字通りの日記など、色々なジャンルがごった煮になっている。

パソコンの不親切なマニュアルやショップ店員を厳しく指摘し、腐敗した政治やマスコミを斬りまくる。一方でSF会の友人や家族との心温まる話もあれば、ひたすらソフトの機能を比較検証したり。とにかく自由奔放。

AT互換機からまともにパソコンを始めた人にとっては、当時の情勢がよく分かって面白い。1980年代末はさまざまな機種やソフトが乱立していた時期。変換機能がワープロソフトに依存し、さらに文書ファイルにメーカー間の互換性が無いというのは今じゃ考えられないなあ。

メインはもちろんウィザードリィ。攻略情報などをネタバレしてもらったりとか、救助隊や資金繰りのために「先輩」のデータを借りたりとちょっと「ずるい」一方で、マッピングは一から手書きして、ボス戦では自分で作ったキャラを使うなど、自分のやり方で自由に楽しんでるといった印象。シナリオ終盤になると日記が簡素になるのは、それだけ没頭してたということなんだろうなあ。

仕舞には現実世界にウィザードリィが浸食してくる。SF大会の会場はウィザードリィの城?出迎えてくれるのはギルガメッシュ酒場の娘!?さらには自らの戦争体験を唐突に語り出す。捕虜の娘との淡い恋の思い出や、隊長に呼ばれて芸者との初めての夜を過ごすエピソードなどは「これって何の本だっけ?」と思いながらもすごく面白い。軍隊に対する複雑な感情は、「宇宙の戦士」の訳にも生かされているのだろう。

現実と仮想が、現在と過去が、想像と妄想が入り交じる不思議な「日記」を綴るのは、好奇心を忘れない永遠のSF魂。理想の老後像かも知れない。著者は2004年に永眠されたが、今を生きていればどういうものを書いただろうか。

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