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書評:ウィザードリィ小説アンソロジー
佐山アキラ(現:馳星周)、手塚一郎、ベニー松山。3人のゲームライターがそれぞれ1作品を書いている。
ウィザードリィの世界が舞台だが、3作はそれぞれ独立した世界観。全体的に、ゲーム小説としてはちょっと大人向けの内容。


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酔いどれの墓標(佐山アキラ)

ウィザードリィ5のNPCである、ルビィ・ワーロックの一人称視点で全編が展開される。ハードボイルドでアウトローな語り口が特徴的。仲間を失って堕落したルビィが、酒場で出会った新米冒険者の少女に惹かれるのだが……。

ルビィがかつてワードナを倒したという設定は、本来の時系列的には矛盾があるのだが、本作を楽しむ上では関係ない。レベル上げに飽きたところで仲間を事故で失って落ちぶれる、というのは何だかゲームのプレイヤーを彷彿とさせる。

ルビィを初め、5のNPCが続々登場。ゲームではちょっと選択肢を間違えるだけですぐ戦闘になって、感情移入もへったくれも無かったのだが、本作を読んでちょっとは好きになれた。不器用で愚かでどうしようも無いルビィに乾杯。

関連レビュー:不夜城

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女神ソルジーナ(手塚一郎)

少年が偶然出会った、村の守り神にうり二つな若きエルフ。彼女の笑顔を取り戻せるのか?

トレボーの出生や、宿屋の主人の視点などは面白いんだけど肝心のメインストーリーの終盤がぐだぐだ。結局エルフは何のためにダンジョンに潜ったの?偉そうな口を利いてる割に見かけ倒しだったのもなんだか残念な感じ。

普通のアンソロ本にでも入っていれば普通の小説として読めたんだろうけど、この本の場合は他の2作の完成度が高すぎるのでどうしても見劣りしてしまう。氏は「小説ウィザードリィ4」では神がかった筆を見せているので、今回は調子が悪かったと言うことで。

リンク:著者コメント(ベントスタッフ)

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不死王(ベニー松山)

氏が再構築したWiz前史。「ウィザードリィのすべて」「隣り合わせの灰と青春」でほのめかされていた過去の出来事が明らかに。なぜ魔法の武具はロストテクノロジーになったのか?なぜエルフやノームが人間と同じ寿命になったのか?ワードナとバンパイアロードの正体は?全てはこの物語で明かされる。

単なるゲームの解釈ネタ小説かと思えばそうではない。魔法という「文明」による因果応報、不死者としての苦悩、自己の存在理由など深刻なテーマを持ち込んでいる。究極生物として人工的に産み出されたがために世界の中での自我を確立できなかった不死王が、最終的にアイデンティティを確立するくだりは素晴らしい(ずっと後の作品になるが、ポケモン映画の「ミュウツーの逆襲」と通じるところがある)。

もちろん、戦闘シーンは迫力満点だし、思わず息を呑む妖艶な吸血シーンなど、エンターテイメント要素も満載。とにかく色んな要素が詰まっているのだが、それでいて長すぎたりくどかったりもせず、自然に読み進められる。個人的にベニー氏のWiz小説の最高傑作だと思う。

ちなみに本作のみ、氏のWiz小説完結版である「風よ、龍に届いているか」の新装版に再録されている。Wizファンで未読の方がいたら、いずれかの形でぜひ読んでいただきたい。

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