カード名に関する雑学。
このブログの読者であれば、「Oubliette」といえば『ウィザードリィ』の原型の一つである大昔のCRPGを連想する向きも多いだろうが、今回はそちらではない。マジック:ザ・ギャザリングに存在する、《土牢》という訳語が与えられたカードのほうである。
公式記事「さらなるこぼれ話:『テーロス還魂記』」にて、《Oubliette》が再録されなかった理由の一つとして「「Oubliette」というのはそもそもギリシャ語ではない。フランス語だ」と回答している。なるほど、テーロスの次元はギリシャ神話が元になっている。そこにフランス語(元は英語のカードだが、英語版でもOublietteというフランス語そのままである)が混入したら雰囲気が崩れてしまうだろう。
でも、ちょっと待った。そもそも《Oubliette》が初登場したエキスパンションは「アラビアンナイト(ここではMTGのエキスパンション名)」である。アラビアとフランスでは、ギリシャとフランス以上に距離があるのではないだろうか?
なぜアラビアンナイトの世界にフランス語の地下牢のカードがあるのか。公式記事「Magic: The Naming--Arabian Nights」によると、(MTGの生みの親である)ガーフィールド氏は映画「ラビリンス」(邦題「魔王の迷宮」のことか?)でこの単語を知り、アラビアンナイトの物語を読んで改めて出会ったから入れることにしたようである。
しかも、アラビアンナイトに登場するといっても本文ではない。バートンによる英訳版の注釈でのみ言及されている。プロジェクト・グーテンベルグにおいて全文が掲載されているのでリンクを貼る。ページ内検索していただければわかると思う(FN#382)。とても長い上に混沌とした展開が続く「カマル・アル・ザマンの物語」のエピソードの一つである。余談だが《ガズバンのオーガ/Ghazban Ogre》で有名な「Ghazban」という語もこの話に登場している。
さて、日本においては南方熊楠が「人柱の話(リンク先は青空文庫)」にて、やはりバートンの訳注として「ウーブリエット」に言及している(というより、ウーブリエットとアラビアンナイトの関係について調べてたら、最初に見つけたのはこちらのほうであった)。地下牢に生き埋めにした囚人をそのまま人柱としてしまうのは、まさにMTGにおいて現在このカードが使われる目的である「除去しつつ黒の信心を稼ぐ」というフレーバーに見事にマッチしている。
しかしながらアラビアンナイトの物語を読む限り、この地下牢はいずれ囚人を引きずり出して、生け贄として山の上で火あぶりするために一時的に閉じ込める空間である。南方熊楠が世界各地に伝わる「人柱」の例として言及した、死んでも出られない開かずの牢獄であるOublietteとは、結果として殺すにしても趣が異なるように思う。なお現代のフランスにおいてOublietteがどのように伝えられているのかは、個人の旅行記だがこちらが参考になる。なぜバートンは注釈で、別物であるはずのOublietteに言及したのだろう?
ともあれ、バートンによる謎の訳注のおかげで《Oubliette》はアラビアンナイトに顔を出し、それを読んだガーフィールドの目に留まってマジックというカードゲームの多元宇宙に登場することができた。さらに、最初に刷られた時点では影も形も存在しなかった「信心」というメカニズムによって本来のフレーバーが強化され、よりエキサイティングな1枚になったというわけだ。それにしてもアラビア世界に紛れ込んだフランス語のカードがギリシャ神話風の要素で活躍するのだから、なんとも奇妙な偶然の連鎖である。
公式記事「さらなるこぼれ話:『テーロス還魂記』」にて、《Oubliette》が再録されなかった理由の一つとして「「Oubliette」というのはそもそもギリシャ語ではない。フランス語だ」と回答している。なるほど、テーロスの次元はギリシャ神話が元になっている。そこにフランス語(元は英語のカードだが、英語版でもOublietteというフランス語そのままである)が混入したら雰囲気が崩れてしまうだろう。
でも、ちょっと待った。そもそも《Oubliette》が初登場したエキスパンションは「アラビアンナイト(ここではMTGのエキスパンション名)」である。アラビアとフランスでは、ギリシャとフランス以上に距離があるのではないだろうか?
なぜアラビアンナイトの世界にフランス語の地下牢のカードがあるのか。公式記事「Magic: The Naming--Arabian Nights」によると、(MTGの生みの親である)ガーフィールド氏は映画「ラビリンス」(邦題「魔王の迷宮」のことか?)でこの単語を知り、アラビアンナイトの物語を読んで改めて出会ったから入れることにしたようである。
しかも、アラビアンナイトに登場するといっても本文ではない。バートンによる英訳版の注釈でのみ言及されている。プロジェクト・グーテンベルグにおいて全文が掲載されているのでリンクを貼る。ページ内検索していただければわかると思う(FN#382)。とても長い上に混沌とした展開が続く「カマル・アル・ザマンの物語」のエピソードの一つである。余談だが《ガズバンのオーガ/Ghazban Ogre》で有名な「Ghazban」という語もこの話に登場している。
さて、日本においては南方熊楠が「人柱の話(リンク先は青空文庫)」にて、やはりバートンの訳注として「ウーブリエット」に言及している(というより、ウーブリエットとアラビアンナイトの関係について調べてたら、最初に見つけたのはこちらのほうであった)。地下牢に生き埋めにした囚人をそのまま人柱としてしまうのは、まさにMTGにおいて現在このカードが使われる目的である「除去しつつ黒の信心を稼ぐ」というフレーバーに見事にマッチしている。
しかしながらアラビアンナイトの物語を読む限り、この地下牢はいずれ囚人を引きずり出して、生け贄として山の上で火あぶりするために一時的に閉じ込める空間である。南方熊楠が世界各地に伝わる「人柱」の例として言及した、死んでも出られない開かずの牢獄であるOublietteとは、結果として殺すにしても趣が異なるように思う。なお現代のフランスにおいてOublietteがどのように伝えられているのかは、個人の旅行記だがこちらが参考になる。なぜバートンは注釈で、別物であるはずのOublietteに言及したのだろう?
ともあれ、バートンによる謎の訳注のおかげで《Oubliette》はアラビアンナイトに顔を出し、それを読んだガーフィールドの目に留まってマジックというカードゲームの多元宇宙に登場することができた。さらに、最初に刷られた時点では影も形も存在しなかった「信心」というメカニズムによって本来のフレーバーが強化され、よりエキサイティングな1枚になったというわけだ。それにしてもアラビア世界に紛れ込んだフランス語のカードがギリシャ神話風の要素で活躍するのだから、なんとも奇妙な偶然の連鎖である。
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