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本とゲームのレビューと雑文が中心。

教養としてのウィザードリィ入門
各種パロディなどを理解する上で知っておきたい『ウィザードリィ』の特徴。

RPG史やD&Dとかにはそれほど詳しくない(よその受け売り)のでツッコミ歓迎。

はじめに


『ウィザードリィ』という、コンピュータRPGの金字塔的な作品がある。日本ではシビアなダンジョンRPGとして、またコンピュータRPGの始祖的な存在(これは誤解や誇張もあるのだが)として知られており、現代に至るまで様々な創作物において、直接的あるいは間接的にパロディされる。

しかし、知名度が高い一方で実際にプレイする手段が限られている。版権がややこしいので、移植版も含めて現役のハードウェアでは動作しないのだ。家庭用ゲームに移植されたものであれば中古として比較的容易に手に入る(作品次第だが)が、よほどのレトロゲーム愛好家でもなければハードルは高いだろうし、プレイ環境があっても実際に遊ぶのはゲームバランスなども含めてシビアなところがある。

そこで、「各種創作物でネタにされる『ウィザードリィ』とは一体なんなのか」という点を、未プレイ(そして今後もプレイする予定がない)のファンタジーファンにかいつまんで説明するための記事を書いてみることにする。主に「ウィザードリィを元にした創作物」を書く時に参考になりそうな情報。

作品について


本編だけで8作、その他の外伝類も含めると公式タイトルだけでも膨大な数に登るのだが、基本的に創作物においてネタにされるのは1作目、サブタイトルにして『狂王の試練場』が大半である。地続きの続編である2や3、1のラスボスを主人公にした4、一応の続編でありシステムを拡張した5、それらをベースにした国産の外伝はさておき、6以降がネタにされる機会は(少なくとも日本国内では)稀である。よって、さしあたっては1作目だけ押さえておけば良い。

ではそのウィザードリィ1というのがどういうゲームであるのか。一言で言えばTRPG(というか、本来の「RPG」)である『アドバンスド・ダンジョン&ドラゴンズ(AD&D)』の、主に戦闘要素を単純化して家庭用パソコンで再現したものだと思っておけばよい。ただしAD&Dのライセンス商品というわけではない。

ゲームバランス


「とにかく死ぬ」「蘇生には高額が必要」「蘇生に失敗すると二度と生き返らない(ロスト)」といった要素は、パロディ創作において頻出する。これは正しいのだが、多分に「盛って」いる部分はあるように思う。

というのも、初期の公式ノベライズの時点から、「システムやセオリーを知らずに無駄死にを繰り返したプレイヤーの体験談」といったメタ的な要素が多分に含まれている。きちんとキャラメイクをして(高ボーナスの厳選ではなく、適切な配分という意味)、まともなパーティを組み(前衛と後衛を適切に配分する)、適当な戦術で戦い(眠りの呪文やアンデッド退散で驚異を取り除くことを最優先する)、退き際をきちんとわきまえれば、まあ運が悪ければ死者が出るだろうが1階で全滅ということはそうそうない。1階のモンスターは眠りに弱い通常生物か、Lv1僧侶でも容易に退散させられるアンデッドしかいないのだ。

チュートリアル的な要素は当然存在しなかったのですべてのプレイヤーが最初から上記のように「適切な」プレイングができたとは思えない。しかしそれは日本での話であり、本来の想定プレイヤー層はAD&Dは嗜んでいるとみなされたはずだ。日本でのTRPGの扱いからすると想像しにくいのだがアメリカでは少なくとも当時ミリオンヒットはしていたはずで、パソコンゲームなどよりも遥かにメジャーな遊びだったのだ(参考元)。

そのような事情もあり、日本ではプレイヤーキャラに「右も左も分からないプレイヤー」という像を重ねがちで、結果としてWizライクファンタジー創作においては食い詰めたゴロツキ(当然ろくに訓練を受けていない無知な輩)が冒険者になって、結果として膨大な死体の山が築かれたりもする。そのような描写は多くの日本人プレイヤーの経験を思い起こさせ、またある種の様式美にもなっているのだが、ウィザードリィ本来のゲームバランスとはやや離れたものであることは留意しておきたい。

参考までに、AD&DにおけるLv1(つまりキャラメイク直後)の戦士(Fighter)は「Veteran」の称号で呼ばれる。日本語版では「古強者」という定訳だが、「退役軍人」という意味もある。つまりLv1戦士といえども少なくとも専門的な訓練、ことによっては実戦すら経験しているようなキャラクター像が想定されているのである。当然、装備や隊伍も整えずに無謀にダンジョンに突入するような行為はロールプレイとしてはあり得ない。

キャラメイクについて


基本的にデフォルトキャラはいないので、まずはキャラメイクから始める。最初に種族(人間・エルフ・ドワーフ・ノーム・ホビット)を選び、次にランダムに決定されたボーナスポイントを任意のパラメータに割り振り、それによってキャラクタークラスに就かせる。基本的に種族やボーナスポイントに関わらず、必ず何らかのクラスに就くことはできる。

ボーナスポイントはランダムなので高い値が出るまで何度でもやり直すというスタイルが日本では完全に定着している(プレイヤー同士の会話では必ずと言っていいほど話題に登り、二次創作にすら取り入れられる)のだが、個人的にはそこで粘るくらいならさっさとパーティを組んで経験値を稼いだほうが有益だと思う。初期値がどうあれ上限値は変わらないし、序盤に必要な能力は力と素早さ、生命力くらいなので厳選にそれほど意味があるわけではない。

ちなみにキャラクターの作成はノーコストで行える。作成したキャラはいくらかの資金を持っているので、蘇生費用が捻出できない場合などに作成と削除を繰り返してお金を集めるという小技がよく用いられる。これを新人相手に強奪していると取るか、何らかの手段での資金調達と取るかは人それぞれだろう。資金に関してはオールドプレイヤーでも何らかのインチキをしている例が少なくない(「ウィザードリィ日記」の矢野徹氏など)。

キャラクタークラス(職業)のイメージ


まず断っておくが、そもそも「戦士」や「魔法使い」というのは役割(クラス)であって職業(ジョブ、生業)ではない。それはそうと便宜上「職業」と呼んだり、クラスチェンジを「転職」と呼んだりするのは慣例である。

各特徴はあくまでもシナリオ4くらいまでのもので、以降のシリーズや外伝ではより個性が強調されている場合が多い。

戦士(Figher)


高いHPと重武装によりパーティの前衛を務める。武器はほぼなんでも装備できるが、基本的には剣で戦う。弓などの飛び道具は存在しないし、メイスなどの鈍器はあるが、あくまでも僧侶向けの制限武器として存在しており、打撃属性と切断属性が区別されているわけではない。また重装備にもペナルティはないので、金欠気味の序盤でもない限りプレートアーマーやヘルメットで完全武装する

後述する侍や君主、忍者は戦士の上級職というか複合職と言えるのだが、専用装備や特殊能力がないことを差し引いても「レベルアップが早い」という一点のみにおいて基本の戦士が最も使いやすい。単純に能力成長の面でもそうだが、レベルの数値そのものが命中率や攻撃回数に直結するのだ。転職するとレベルは1に戻ってしまう。創作物では高レベルの戦士が侍などに転職するケースがある(かの有名な『隣り合わせの灰と青春』の冒頭である)が、実際のゲームではかなり無駄というか馬鹿げたプレイングである。

バランス重視なら人間、パワー重視ならドワーフが適する。ノームもスピード重視なら向くのだが、創作物でノームの戦士というのはあまり見たことがない(見た目からドワーフと区別しにくいからだろう)。エルフやホビットで作るのは完全に趣味。

僧侶(Priest)


基本職としては戦士に次ぐ重武装が可能。前衛を務めることも多い(人によるが、だいたい「戦士3人」か「戦士2人と僧侶1人」がスタンダード)。刃物を持てないという戒律のために武器はメイスやフレイルを使う。杖も装備できるが、シナリオ1では敢えて装備することで有利になるような杖は存在しない(和製RPGによくある「魔力を増強する杖」のようなものはない)。

回復や防御の呪文の他に、消費無しで行える基本行動のアンデッド退散(DISPELL)が非常に重要。経験値は入らないものの1グループをまとめて消し去ることができる(成否判定はお互いのレベル次第だが、大抵の場合は半分以上消し飛ばせる)。

防具は胸当てか鎖帷子に盾というスタイルである(ヘルメットや小手は装備不可)。和製創作では可憐な少女が担当することが多い(Wizに限らずRPG風ファンタジーを描かせると大体そうなる気がする)が、実態としては戦士に次ぐマッチョではないかと思う。なお高レベルの僧侶は転移の呪文を込めたリング(本来はdiademで宝飾のある冠らしいのだが、ringと呼ばれるバージョンも多いので、日本では鉢金のような防具として解釈されやすい)を装備している事が多い。誰でも装備できるが、準前衛の僧侶に優先的に被らせるのが基本なのだ。『ウィザードリィのすべて』表紙イラスト(右奥のノームらしき人物)もそのような意図だと見られる。

パワー重視ならドワーフ、スピード重視ならノームが向く。エルフも信仰心が高いので悪くはない(特に、後述の侍への転職を意識する場合)。人間は信仰心が低いので向かない(多量のポイントをつぎ込む必要がある)のだが、創作物ではよく登場する。各クラスの中では比較的現実にイメージしやすいからだろうか。

盗賊(Thief)


宝箱の罠解除の専門家。基本的に識別や解除は盗賊でしか行えない(厳密には誰でも可能だが、成功率は低く暴発させるリスクが高いのでやるべきではない)。ダガーや革鎧などの軽武装が可能だが戦闘能力は僧侶以下で、基本的に前衛に出すべきではない。前衛が倒れた時の護身用にはなるが、慣れたプレイヤーは回収したアイテムを持たせるために最低限の装備に留める場合も多い。

素早さと幸運が高いホビットの印象が強く、創作物でもほぼホビットなのだが、実は同じ素早さを持つノームも悪くない。幸運は罠の回避率には影響するが解除率には影響しないので、盗賊自身が高い必要はないのである。

魔法使い(Mage)


戦闘力は最低だが強力な魔法を使える。特に範囲攻撃でまとめてモンスターを相手にできるのが強い。最初から覚えているKATINO(カティノ、眠りの呪文)が序盤では効果てきめんで、その後も炎や氷といったエレメントによる範囲攻撃を覚える。一方でHPの成長率は最低で、魔法防御に有利なこともないので敵の呪文やブレスが吹き荒れる中盤以降はとても死にやすくなる。魔法使いを続けるメリットはあまりないので、すべての呪文を覚えたあたりで転職させるのが効果的(このため「高齢のベテラン魔道士」みたいなキャラクター像は想像しにくい)。

装備に関しては一応短刀やローブを装備可能だが、耐性やヒーリング効果がないアイテムはそもそも装備させないのが普通。手が空くので適当な消耗品を持たせることが多い。

作成だけなら知力が最も高いエルフが向くのだが、素早さや耐久も無視できないので各種族とも向く。素早さが低く力(魔法使いにとって死にパラメータ)が高いドワーフは無駄が多いが、それでも体力を評価して採用する人もいる。坂田靖子氏が「ダンジョン狂想曲」において、今で言うところのタンクメイジ論を披露している等。

司教(Bishop)


一応上級職の一つに数えられるが、能力制限がゆるく容易に作成可能(特にエルフなら必ず作れる)。魔法使いと僧侶の両方の呪文を覚えるが、成長が非常に遅い。レベルアップ自体はもとより習得のペースが極めて遅いのが問題で、最初は戦力になるが次第に力不足が露呈する。このため、最初からパーティに入れるケースは稀(アイテム使用と眠らせに特化すれば使えないというほどでもないのだが)。武器は僧侶並みのものが使えるが、防具は革鎧と小盾程度、つまり盗賊以下である。

最も重要なのはアイテムを鑑定する能力。特に、アイテムを換金する場合は自前で鑑定しないと利益にならない(売却額と同額の鑑定料を取られるため)。かといってパーティに入れづらいのは前述の通りなので、鑑定要員や資金の預かり役(本作で所持金はキャラ単位で管理される)として酒場に待機させている場合が多い。

レベルが低いと鑑定が失敗しやすく、呪われたアイテムは強制装備されてしまうこともある。解除には高額の費用がかかるので、呪われてアイテム欄が埋まった司教はしばしば抹消されて再登録されるのだが、創作物でまともに再現すべきか否かは作風によるだろう(呪いの装備まみれで追放された司教が復讐する話とか誰か書いてないかな?)。

ちなみに名前こそ上級聖職者系だが、なぜか魔法使いより僧侶系の呪文のほうが覚えるのが遅かったり、退散能力も最初は使えないなど、どうも僧侶のほうは副業なのではないかという節がある。開発中の名称であったらしいSage(セージ、賢人)のほうがフレーバー的にはそれっぽいような気がする。

侍(Samurai)


いわゆる魔法戦士。装備は戦士と同等で、魔法使い系の呪文を覚える。しかし物理攻撃と呪文攻撃を両立できない上に習得も遅いので、せいぜい位置探知の呪文くらいしか使わないことが多い。最強武器であるムラマサを装備できるのが魅力だが、それ以外は成長の遅い戦士と言って差し支えないので、いわゆるロマン枠である。

なお、ムラマサを除けば侍らしい和風の装備は一切存在しない。盾を装備できる点も含めて戦士と同様の武装になる(ただしシナリオ5では専用武器が増えた代わりに重装備が不可能になり、外伝やWizライクゲームでもそれを反映している例も多い)。もっとも創作においては「武器職人に頼んで故郷の鎧に似せた」などの理由付けで日本式の鎧を着せるのもありだろう。

「日本人」的なイメージを投影しやすいので創作物ではだいたい人間、それも主人公格がなる場合が多いのだが、ゲーム上では能力的になぜかエルフが一番作りやすいため、それをネタにして「似合わない鎧を着たエルフ侍」みたいなキャラ造形も割と見るような気がする。

ちなみに開発中はレンジャー(Ranger)と呼ばれていたという話だが侍との共通点は薄い。よって、侍という用語を使いづらい世界設定であっても、安易にレンジャーに置き換えるのは考えものである。

君主(Lord)


侍が魔法戦士ならこちらは僧侶戦士。いわゆるPaladin(パラディン、聖騎士)的なクラスと言ったほうが通りがいいかも。シナリオ1では原則として転職でしか作れない。呪文を覚えきった魔法使いをこれにすると無駄がない。呪文に関しては侍よりマシとはいえ、せいぜい戦闘後のちょっとした回復を担える程度なのでものすごく役立つというわけでもないのだが、侍にとってのムラマサのように強力な耐種族効果とヒーリング効果を備えたLords Garb(君主の聖衣)という最強防具を装備できるのが最大の魅力。オーバーパワーでしかないムラマサより遥かに汎用的で強力である。

創作物ではやはり人間、それも東洋系の泥臭い侍に対して、西洋系の美形キャラが割り当てられることが多い気がする。エルフやドワーフの君主というのも様になる。逆に、ホビットはゲームでも創作でもかなり稀だろう。

忍者(Ninja)


君主同様に転職でしか作れない。ある意味でウィザードリィを象徴するクラスであり知名度も高いのだが、世間のイメージとゲーム内の姿に隔たりがありそうな印象がある。現実の忍者はもとより米国産フィクションに出てくるような「強靭な肉体を持つ殺戮機械」のようなイメージとも異なる妙な位置づけで、具体的には器用貧乏な便利屋といったところ。専用装備である手裏剣からして「汎用の最強武器とほぼ同性能だが、毒と生命力吸収に耐性を持つ」という実に渋い効果である。

戦闘能力に関しては、攻撃回数に1回分のボーナスがつく一方で成長の遅さがそれを差し引きしてしまっている(戦士系は、レベルが5上がるごとに増える)し、盗賊と同様の罠解除はできるが確率では本職に劣る(解除失敗が致命的な事態に繋がるのは御存知の通り)。装備なしの状態で防御力が上がるという特性も現実的なレベルではまず活用できない等、数々の要素が微妙に噛み合わない。クリティカルヒットによる即死攻撃(首刎ね)が使えるものの、通常ダメージでは手に余るほどHPが高い敵は出てこない。

装備に関しては手裏剣を除けば戦士と同じ、つまり重武装が基本である。十分にレベルが高ければ装備なしでも高い防御性能を保てるのだが、仮にそれが可能なほど成長しても敢えてそうするメリットは薄い。無理やり「装備なし」のメリットを挙げるとしたら「最低限の戦闘が可能な荷物持ち要員」になれることくらいだ。しかも防御面はともかく、攻撃面に関しては素手の恩恵は特にない(ダメージが上がったり、クリティカル率が高くなるようなことはないようだ)。全体的にあまりにも理不尽というか不可解な設定なので、創作物ではゲーム内ではありえないような活躍を見せたり、外伝などではいくらかマシな扱いになっているのだが。

基本的には通常の転職で作るキャラクターではなく、アイテムの効果で盗賊から特殊転職させるためにある。レベルはそのままで忍者になれるので、前衛の戦士並の強さを即席で手に入れることができる。とはいえ前衛はもともと3人いるだろうし、盗賊としての技能が犠牲になるので、決してむやみに行うべきではないのだが。そもそもそのアイテム(Thieves Dagger、盗賊の短刀)も希少品である。

なお、「防具を装備していない」状態を「全裸」とするネタも多いが、真面目な創作では慎むべきである。そもそも本作では普段着に相当する防具(DQの「布の服」とか)はなく、作成したキャラクターは装備なしの状態で酒場で待機している。よって、装備なしと言えども一般的な服装をしていると考えるべきだ。

創作では(侍と同様に)日本人イメージの人間が多いが、ゲームで作りやすいホビット忍者もよく見る。

クラスチェンジ(転職)について


割と独自要素が多いのでピックアップする。職業(転職先)ごとに設定された能力値基準をクリアしているなら、レベルに関係なく転職を行える。この時、パラメータなどの変化は以下の通り。

  • レベル:1に戻る。経験値も初期化。
  • HP:そのまま。ただしHPはレベルアップごとに再計算される(計算結果が現在値より多ければその分だけ増える)ので、転職後はしばらく上がらない。
  • 能力値:種族固有の値に初期化される。このためキャラメイク時(ボーナスが乗る)より確実に弱くなる。
  • 呪文:覚えている呪文はそのままだが、転職後の職業で覚えられない呪文は新しく覚えられない(バージョンによっては、同クラスの覚え残しの呪文を習得できる場合も)
  • MP(呪文使用回数):そのクラスの呪文の種類数になる。例えばクラス1の呪文を3種類覚えているなら、クラス1のMPは3になる。

上記以外の特性、例えば戦士系がレベルアップごとに成長する攻撃回数や、盗賊の罠鑑定・解除能力などは完全に消えてしまう。

また、例えばレベル10の魔法使いが戦士になった後、再び魔法使いに転職した場合でも、レベルは1からやり直しである(前職のレベルは保存されない)。

近年のRPGのように職業ごとのレベルが保存されていて自由に切り替えることもできないし、D&Dのようにクラスごとのレベルでキャラビルドを行うわけでもない。極論を言えばその職業では本来覚えられない呪文を覚えたキャラを作る以外の目的で転職をする意味はない

具体的には魔法使いを戦士にすれば魔法の使える戦士になり、魔法使いから見ればMPと引き換えに耐久力の低さを補ったキャラになる。魔法使いから僧侶かロードになれば最終的に全ての呪文を覚えられる(手っ取り早く戦力を高めるなら戦士、呪文のエキスパートを目指すなら僧侶、成長は遅いが万能を目指すならロードといった具合に、プレイヤーは目的に応じて選ぶことになる)。

少し変わったところでは、魔法使いや僧侶として作成したキャラを即座に盗賊に転職させることで、能力値と引き換えに最低限の呪文を覚えた盗賊を最初から連れ歩くことができる(この場合、キャラメイクの時点で転職要件を満たす必要がある)。

国産のRPGでいえば、「パラメータの半分と呪文を引き継いだ上でLv1になる」という、『ドラゴンクエスト3』の転職システムへと与えた影響が大きい。逆に、それ以外で参考・模倣した例はちょっと思いつかない。

レベルと年齢と宿屋について


関連が深いのでまとめて紹介する。本作では経験値が溜まっただけでは成長せず、宿屋に泊まって一晩を明かす必要がある。一度に上がるレベルは1つ分だけだが、余剰経験値はプールされている。そのため、例えば2レベルアップ分の経験値が溜まっていれば、2回連続で泊まると2回レベルアップできる。

レベルアップ時には能力が下がる場合もあるというのも有名なネタではあるが、大抵のバージョンではよほど極端な加齢をしていない限り大抵の能力は上がる。能力の上限は低いので、ゲームをクリアする頃にはカンストかその手前の値になっていることも珍しくない(このため、初期能力の吟味は長期的には意味がない)。バージョンによっては異様に上がりにくかったり下がりやすかったりするようだが、基本的には移植時のプログラムミスの模様。ちなみにレベルアップ時に生命力が一定値を下回ると「老衰死」とされるようだが、普通にプレイしていればまず見る機会はない。

宿屋はもちろん回復のための施設である。ただし、無条件で回復できるのはMPのみ。HPは1週間毎に一定量回復するという仕組みとなっている。ランクの高い部屋ほどHP回復効率がよいが、費用や加齢を考慮すると「僧侶を宿屋に泊めて、回復したMPでHPを回復する」のを繰り返すことになる。

無料である馬小屋が多用されるのもそのためである。他の部屋は1週間単位なのに対し、馬小屋は1日単位で利用できるのも非常に大きい(厳密には、キャラの年齢は「週」が最小単位で、馬小屋は「1/7の確率で1週経過」らしいが)。そのため、いくら資金に余裕があっても馬小屋しか利用しないことになりがちである。4コマ漫画でも「たまにはロイヤルスイートに泊まりたい」という女の子が「老けるぞ」と言われて渋々馬小屋に行くネタがあったり…。

なお奇妙なことだが、宿泊及び時間経過は個人単位で行われる。例えばHP回復のために僧侶を繰り返し宿泊させている間、他のキャラには一切時間が流れない。とはいえ、これに関してはシステム上の制約でやむなくそうなっていることは間違いない。例えば創作において「宿屋の中は時間の流れが異なっている」のような扱いにするのは、いくらゲームシステム再現であってもやりすぎであろう。

一方で、加齢する要因としては他にも「死亡からの蘇生」「転職」がある。前者は半年ほど、後者は数年ほど加齢する。宿屋とは異なり特定のキャラのみに起こるイベントなので、これらに関しては時間の経過というより「肉体及び精神的な負担による老化」と見做すのが良いかも知れない。

最後にひとつ。本作には様々なプレイヤー種族が登場するが、年齢の初期値や加齢の条件は変わらない。ファンタジー一般においてドワーフやホビットは人間より長命とされ、エルフはさらに長いにも関わらずだ。これに関しては「人間年齢に換算している」というのが素直な解釈だろうが、有名なベニー松山の作品群では「何らかの要因によって、本来は長命な種族であっても人間と同程度の寿命になった」としている(種明かしは小説『不死王』にて)。

ストーリー


城塞都市を治める狂王(Mad Overlord)トレボーの魔除けが、悪の魔術師ワードナに盗まれた。ワードナは城塞の近くのダンジョンに立て籠もった。トレボーは兵士を差し向けるがダンジョンの罠やモンスターに返り討ちにされる。そこでトレボーはお触れを出し、魔除けを取り返した者に賞金と近衛兵の地位を与えると宣言した。これを目当てに各地から冒険者が集まってきた。」というのが概要。ストーリーらしいものはこれだけである。

トレボー(Trebor)ワードナ(Werdna)は、開発者であるロバート(Robert)とアンドリュー(Andrew)の逆さ綴りである(このため、アルファベットの逆さ綴りやアナグラムを用いたネタは派生創作でもよく用いられる)。またトレボーとワードナの関係性については特に言及されていないのだが、元ネタが開発者の相棒同士である点から、創作においては何らかの因縁が設定されることが多い。

ワードナは「Trebor Sux」といった汚い言葉を書き付けたり、ダンジョン最奥部の居室をオフィスと称するなど、威厳ある魔術師というよりはどこか道化じみたところがある(もっとも、これらは作品そのものに流れる空気かも知れないが)。とはいえファミコン版で用いられた末弥純のイラストのイメージが現在では強い。

ゲームシステムの都合上、ワードナは何度でも復活する(目的達成後もゲーム自体は継続するので、条件さえ満たせば再登場する)。この仕様そのものをストーリーに練り込んでいる例も多い。またトレボーが狂王と呼ばれるせいか(特に暴君であるとは言われていないのだが)対立するワードナは単なる悪役ではないとする例もよく見られる。

町の設備


訓練所


キャラメイクや転職を行う。設定上、都市を訪れた冒険者はここで訓練をして職業の適性を診断されるということなのだろう。厳密には町の中ではなく町外れに存在する(「ダンジョンへ行く」等と同じメニュー)が、あまり気にする必要はない。

ギルガメッシュの酒場


作成したキャラはここに集う。このゲームには主人公がいないため、全てのキャラクターが対等な扱いとなっている。そのため、酒場にいるメンバーから任意に最大6名までのパーティを編成する。この時、善と悪のキャラクターは同じパーティに共存できない(善悪については後述)。

なお酒場ではあるが、飲食を行うような要素はない(もちろんフレーバー的には飲み食いしつつ情報交換しているのだろう)。資金の分配の際などに端数が切り捨てられるので、その金で飲み食いしていると解釈されることもある。

宿屋


回復とレベルアップに使う。詳しくは前述の通り。メニュー画面では別扱いだが、イメージ的には酒場と同じ建物だと解釈しても良いだろう。

ボルタック商店


アイテムの売買や鑑定を行う。日本語の「ぼったくる」を連想させ、実際頻繁にネタにされるのだが偶然の一致らしい。あらゆるアイテムを販売額の半額で買い取ってくれるのは、むしろ古物商としてはかなり良心的な部類だと思われるのだが、前述したように未識別のアイテムは実質換金不可(鑑定額と売却額が同じ)であることがぼったくられると感じる主な要因である。

武器や防具は消耗せず、また種族問わず使い回せるので、補修や調整といったサービスが行き届いていると解釈されることもある。

システム的に見て興味深い特徴は、売ったアイテムが在庫として陳列されるということ。いわば倉庫を兼ねているようなものである。最終的には売却不可のイベントアイテムや、陳列されない呪いのアイテムを除くあらゆるアイテムが並ぶのでコレクションという遊び方が生まれた。プレイヤーキャラ以外の客はいないので、在庫が勝手になくなることもない。ちなみに初期装備向けのアイテムや基本的な消耗品の在庫は無限に用意されている。

とはいえ、「プレイヤー以外の客がいない」というのはあくまでもゲーム上の都合に過ぎない。しかし、本来の仕様では1つのセーブデータを複数人が共有することを想定していたようだ(キャラクターごとにパスワードをかけて利用を制限できたらしい)。つまりボルタック商店はプレイヤー間でアイテムをやり取りする中継地点の役割を果たしていたことになる。たまたま入荷した掘り出し物を手に入れようと競い合う冒険者の姿はいかにもそれらしい。

カント寺院


死者の蘇生や、麻痺や石化からの治療を行う。レベルに比例して金額は上がる。蘇生に関しては失敗することもある上に、失敗しても費用は返ってこないのが非常に心象が悪く、真のぼったくりはこちらではないかとよく言われる。とはいえ自前の蘇生呪文よりも遥かに高い成功率を誇るので、基本的に死んだら利用せざるを得ない。

ただ、シナリオ1に関しては中盤のとあるイベントをこなせば実質金に困らなくなる(具体的には換金アイテムを何度でも確実に入手できるようになる)ので、費用に苦しむのは序盤の話である。他のシナリオでも似たようなアイテムは多く、金欠に悩まされる時期は限られる。そもそも蘇生以外に金を使う機会がほとんどない。

ちなみに、毒についてはダンジョンを出た時点で自動的に治る。敢えて理由づけするなら「防疫のために無償で治療される」とか「ダンジョンの瘴気と反応するので地上では無害化される」といった解釈となるだろうか。

善・中立・悪


キャラメイク時に設定する属性(alignment)。基本的にD&Dと同様のはずだが、どうやらそれよりも「悪」のイメージがマイルドになっている模様である。というのも、D&Dの「悪」とは利益や快楽のためなら殺人すら辞さないような危険な悪人を表すようで、基本的にプレイヤーキャラとしての使用は推奨されないらしいのだ(このあたり詳しくないので間違っているかも)。

(なお、日本語の資料では「性格」や「戒律」と呼ばれることもあるが、本来の用語である「属性」で通す。現在は日本のRPGで「属性」といえば熱や冷気などの攻撃エレメントの分類に使われることが大半なので紛らわしいだろうがご了承を願いたい)

ウィザードリィにおいてはオリジナル版の説明書にあるという「道を渡ろうとするおばあさん」の例えが有名である。「無条件で助ける」のが善であるのに対し、「見返りがあるなら助ける」のが悪とされる。D&D的な悪であれば、いいカモだとばかりに金品を強奪しそうではないか(実際、ラスボスであるワードナはそういう性格だとされている)。

ともあれ、設定した属性は主に4つの場面に影響する。まずは職業(クラス)の選択。善は盗賊と忍者になれず、中立は僧侶・司教・君主になれず、悪は侍と君主になれない。善と悪はそれぞれ性格が反転することがあるが中立は不変。ゲーム上では、中立キャラは僧侶系呪文を一切使えないという意味である。

次にパーティ編成。善と悪は価値観が大きく異なるので同じパーティを組めない。ただし別のパーティとしてダンジョンに入り、中で合流することはできる(創作物においてもしばしば再現される)。これは裏技というかシステム上の抜け道のようなもの(オリジナルのApple版では1パーティしかダンジョンに入れられないので不可能らしい)だが、「協力すること自体はやぶさかではないが、酒場で同席するのは体面が悪いので密かに合流する」と解釈する向きが多い(主に、利害を重視する悪の立場から)。本来のフレーバー的には価値観の相違というのはそう簡単に克服できるものではないらしいのだが、日本人には理解されにくい部分のようである。

性格の反転のきっかけになるのは、ダンジョン内で時々現れる「友好的なモンスター」への対応である。善であるなら戦ってはならず、悪であるなら戦わなくてはならない。属性に反する行動をとると性格が反転してしまう可能性がある。ここで奇妙なのは、悪の場合はいかなる場合でも(たとえ取るに足らない雑魚でも、自分が死にかけていても)戦わなければならないという点である(戦闘に入った後で逃げるのは可)。利己主義的なイメージとはかけ離れた設定となっている。これをゲームの都合として割り切るか、「魔物は絶対許さない教条主義者」のような理由付けをするかは人によるだろう。

最後に、装備品の相性について。一部の装備品は特定の属性にしか対応せず、そうでない属性の者が装備すると呪われてしまう(装備中に属性が反転しても呪われる)。呪われると外せなくなる上に、防具は逆効果となる。さらに元の属性に戻っても呪いは解かれない。シナリオ1において該当するのは中立と悪のみで、特に悪の防具は汎用品としては最強なので、一般にプレイヤーに聞いてみれば「悪のほうが有利!」という答えが返ってくることが多いと思う。しかし前述のように、悪である者は戦闘を回避しにくいので死にやすいという意味でもある(逆に、友好的であろうが構わず狩れるので成長やアイテム入手の機会は多い)。結局の所はプレイスタイル次第である(僕はノーリセット慎重派なので善のキャラが多い)。なお、最強装備の中では手裏剣のみが悪専用で、ムラマサと君主の聖衣は無制限である。武器が呪われるペナルティはクリティカルヒット(首切りによる即死)が出なくなることだけなので、気にせずに使うプレイヤーも多い。

死体の回収


全滅した場合、死体はその場に放置される。救出する場合は別のメンバーをそこに送り込んで回収しなければならない。ここで重要なのは、死体もパーティの一員であることと、パーティは6人までという制限。つまり6人未満のパーティを組んだ上で死体を回収する作業を繰り返す必要がある。

「6人パーティで救出に向かい、現場に付いたら3人パーティ2組に分かれ、それぞれで死体3つずつ回収すればいいのでは?」と思うかも知れないが、仕様上メンバーの合流(死体回収)はできても分割はできないので、この手は使えない。もっともこれではあまりにも不自然なので、創作では6人パーティで1人が1体ずつ死体を抱えて帰るという描写もありだろう。逆に、ゲームでは可能な「1人で死体5つを抱えて歩いて帰る」というのは創作では無理がある。

なお、全滅しても死体が残るとは限らない。全滅した時点でキャラロストしてしまう可能性がある。設定上は「魔物に食われた」といったところだろうが、死体さえ残ったのならそのまま放置しても消えることはない。もっともこれはあまりにも不自然というかゲーム側の限界(ゲーム全体に流れる「時間」の概念がない)だろうから、回収できる可能性があればすぐにでも行くのが人情だろう。

善悪混成パーティで説明したように、メンバーの合流は別に死体でなくても可能である。全滅する前に回復要員を送り込むというのは現実的な攻略法でもある。特に序盤では「毒を食らった上に回復手段がないので、このまま歩くと死ぬ」という状況が頻発するが、ここで慌てずにキャンプを張って冒険を中断し、毒消しを持った救助要員を送り込むというテクニックは重要である。例によって時間の概念があやふやなゲームならではの技なのだが、現実でも「下手に動かせないほどの重症で立ち往生」というケースは自然に想像できる。

ところで、ゲームではプレイヤーという神の視点があるので忘れがちだが、本来は「パーティがダンジョン内で危機に陥った」という状況を、待機メンバーがリアルタイムで把握するのは不可能のはずである。理由付けとして通信系のマジックアイテムを用意してもいいのだが、それでは白けると言うならゲームではほとんど使わない「カンディ」の呪文(任意のキャラの現在地を確認する)を定期的に使わせる手がある。長時間動きがなければ非常事態だというわけだ。もっとも、浅い階層しか探索できないうちは、単純に「帰りが遅いので心配して見に行く」でも十分だろう。

パロディやジョークに満ちた世界というのは本当か?


結論から言えば「違う」。僕があれこれ言うよりも、詳しいことはビオラインリード(どぐち屋)さんの「wizはパロディ世界で硬派な解釈は日本人が作ったという主張」や、神殿岸さんの「「ウィザードリィ」の内容は長年日本人に誤解されていた…そうなの?」に詳しくまとめられているので、そちらを一読していただきたいところ。

なぜ妙な認識が広まったのかといえば、一言で言えば「反動による誇張」ではないかと思う。しかし近年ではプレイすらしていなさそう(それどころか、攻略/情報サイトやプレイ動画を見る気すらなさそう)な人が、ことさらに「ウィザードリィはパロディとジョークだらけの世界なんだ!」という認識を主張しているような事例をしばしば目にするような気がするのが個人的に嫌な感じなのである。あくまで「気がする」レベルに留まってはいるのだが。

僕が思うに、ウィザードリィにおいてパロディ要素と呼べるようなものがあるとすれば、用語やメッセージなどの些細な部分よりもむしろ「10階あるダンジョンのうち、まともに探索する必要があるのは3階分くらいで、ほとんどのフロアはエレベーターで素通りできる」といったRPGのデザインの根本的な部分なのではなかろうか。どうせネタにしていじるのならば、そのあたりを突っ込んでみればいいのにな、と思う。

その他


(気が向いたらなにか加筆するかも)

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