今では当たり前のように買えるキノコも、その歴史は意外と新しかったりする。
エリンギ
あれは1990年代の後半だっただろうか。家族旅行でキャンプに出かけた時、長野県あたりの道の駅で、見たこともないキノコを見つけた。それは「エリンゲイ」という名前だった。「地元の特産品かな?」と話し合ったものだ。この時、その「エリンゲイ」を実際に買って食べたかどうかは覚えていない。
数年後、地元のスーパーで「エリンギ」というキノコが売られるようになった。まさしくそれは以前見た「エリンゲイ」そのものだった。どうやら舶来のキノコであるらしい。横文字のキノコといえばマッシュルームくらいしか知らなかった(マッシュルームはキノコの意味なので、つまり洋物のキノコといえば、いわゆるマッシュルームことブラウンマッシュルームの他になかったのだろう)ので目新しさがあった。安価で使い勝手も良く、見た目や食感が松茸の代用品にもなるので、それが食卓に定着するまで時間はかからなかった。
マイタケ
栽培品が一般に流通したのは1990年代であるらしい。それまではもっぱら野生で採れるものだったようだ。90年代初頭のアニメ『キテレツ大百科』でキノコ狩りを題材にした回があったのだが、田舎育ちの勉三さんが「これはマイタケ!幻のキノコだす!」とかなんとか言ってはしゃいでいた回が印象に残っている。確かに僕が小さい頃は家庭で見かけることはなかったキノコである。
現在でこそ極めて一般的なキノコの一つとなり、食材としてはもとよりタンパク質分解酵素(硬い肉を柔らかくする)を含むことでも知られているのだが、90年代頃のレシピ本だと全く使われていなかったりして、当時は一般的ではなかったことがわかる。
シメジ
「シメジ」と呼ばれるキノコは、ある時期を境に入れ替わっていることをご存知だろうか。今でこそ茶色い「ブナシメジ」が一般的だが、90年代くらいまで、「シメジ」というのは灰色の「ヒラタケ」のことを指した。今でも、「かつてシメジと呼ばれていたキノコ」は「ヒラタケシメジ」という名前で流通しているようだが、見かける頻度は激減してしまった。
本来、ヒラタケとシメジは全く別物らしいので、現在の呼び方は全く正しいと言えば正しいのだが、いつの間にか「シメジ」と呼ばれるキノコがすっかり入れ替わってしまったというのは少し不気味である。他の青果類で似たような例はちょっと思いつかない。それはそうと、ブナシメジ自体はボリュームがあって風味も良いので好きである。
シメジの呼称に関しては調べてみると色々と複雑で、平たく言えば「ホンシメジではないものをシメジと呼んで売っていたことが問題視されて改名された」という経緯があるようだ。本来のシメジは美味で知られているが希少なものであるらしい。そういえば『まんが日本昔話』でも、キノコの精に導かれて千本シメジの群生地にたどり着いたお坊さんが大喜びしていた回があったなぁ(宮城の昔話「お化けしめじ」)。
ホクトのCM
ここまでに挙げた「エリンギ、マイタケ、(ブナ)シメジ」の名前で、「おいしいキノコはホクト♪」のCMを思い出された方もいるのではないか。あれが放送されたのは2000年ごろだったと思うが、ちょうどこれらのキノコが食卓に定着し始めたのがその頃だった。当時のCM評では「あまり聞き慣れないキノコたち」などと呼ばれていたのを覚えている。まだまだ新参者だったのだ。
馴染みのある食材でも、その定着は意外と近年だったりするという事例である。キノコというのは大規模な人工栽培がしやすい作物なので、体感的には急速に普及したように感じるのかも知れない。
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