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ポケモン赤緑:ピカチュウのゲームデザイン上における位置付けについて
ポケモン赤緑発売24周年記念記事、ということにしておこう。

はじめに


初代ポケモンにおけるピカチュウにまつわる記憶というのは、アニメ放送に前後した怒涛のメディア展開のイメージが強く、たとえ発売直後にリアルタイムでプレイしていたとしても、自らが体験した生の記憶というのは意外と忘れられがちである。故に、当時からのプレイヤーを名乗る向きから「本来ピカチュウはなんてことのないポケモンに過ぎなかった」のような発言を耳にすることがある。

しかし改めてゲームを見てみると、ゲーム全編を通してピカチュウ及びライチュウが特別なポケモンとして扱われていると思われる箇所がいくつも見られるのである。以下に思いつく限り挙げてみることにする。

説明書の情報


説明書のポケモン紹介において放電能力が紹介されている。図鑑と同様なのだが、ここで具体的な得意技に言及されているのはヒトカゲ、ゼニガメ、ニドラン♀の他はピカチュウのみである。まして電気(雷)はRPG一般において主要な属性であるため、見た目のデザインも相まって多くのプレイヤーに「欲しい」と思わせる仕掛けがある。

トキワの森


ピカチュウの出現率は5%。トキワの森のエンカウント率自体が低めなので、一通り探索(トレーナーと戦ってアイテムを拾得)した程度ではおそらく遭遇できない確率のほうが高いと思われる。一方で虫取りの少年たちが使ったポケモン(キャタピー、トランセル、ビードル、コクーン)をすべて揃えようと思う(この場所に出現することは図鑑から明らかである)人ならばかなりの確率で遭遇できるはずだ。

この時点ではピカチュウは野生以外では見ることもできず、偶然遭遇できなければここに出現するかどうかもわからない。先に進みたいか、図鑑をじっくり揃えたいかというプレイスタイルの違いで遭遇可能性が大きく左右されることになる。

ニビ科学博物館


ニビシティにある博物館。50円とはいえ、アイテム以外で対価を払わされるイベントは今回が初めてとなる。せこいプレイヤーは「入る前にセーブして、情報を得たらリセットしてしまおう」と考えるかも知れないが、ここまで安いとそのまま受け入れる人も多いのではなかろうか。むしろRPG慣れしていると「フラグが立つだろうからリセットしないほうが得策だろう」等と深読みするところかも知れない(実際はそのようなフラグは無いのだが)。

さて、博物館2階にいる親子から、ピカチュウがトキワの森にいるらしいという情報を聞ける。既に遭遇していたのでなければ、ここで初めて知る情報となる。ピカチュウの具体的な情報を得られる場所が有料施設内(積極的に内部を調べようとするだろう)にあるというのは絶妙で、仮に民家や通行人から同じ情報が得られる場合と比較すると読まれるチャンスは多く、また印象に残る。多くのプレイヤーは、ここで引き返してピカチュウを探しに行くのではないだろうか。

ニビジム


ピカチュウの電気ショックは、いわゆる御三家の技を除けばゲーム内で最初に使えるようになる特殊攻撃である。物理に強いトキワの森のサナギ達にも軽々とダメージを与えられる。同じく頑丈そうな地面タイプ(ニビジムのポケモンはすべて地面を持つ)に使うと…「効果がない」だと?

実はゲーム内で最も初期に見られる「効果がない」メッセージは、地面に対する電気タイプの攻撃である。「アースで放電するから地面属性に電気は効かない」という理屈はそれっぽいが、従来のRPGではめったに見られなかった描写。『ファイナルファンタジー』や『サガ』シリーズにおいて四大元素の大地を象徴するモンスターがよく登場するが、特に電気に強いような例は思いつかない(大地=アースの理屈による電気耐性として、かろうじて例示できるのは『メタルマックス2』の装備品のアースチェインくらいである)。

肝心な時に役に立たない電気攻撃を見せられることで、一瞬「使えないポケモンだ」と思われるかも知れないが、ジムの後に戦う頻度の多い飛行タイプには効果抜群をとることができる。RPG一般の電気要員は、主に対水棲・対機械において需要があることが多いので、飛行に効くというのは嬉しい誤算となる。

オツキミ山においては、電気が効かないイシツブテと、電気がよく効くズバットが大量に出現する。ここでタイプの使い分けという概念をはっきり学ぶことができる(逆のパターンとしてはフシギダネの「つるのムチ」で体感できるが、それ以外では対照的な相性差を実感できる技は現時点では無い…この時点でニドランをLv43まで育てて二度蹴りを覚えさせるような変態は帰ってどうぞ)。

電気タイプの希少性


初代における電気タイプは6系統。遭遇できる順番としては、ピカチュウ、ビリリダマ(イワヤマトンネル手前)、サンダース(タマムシシティ)、コイル・エレブー・サンダー(無人発電所)となる。このうちビリリダマは自力で電気技を覚えず、サンダースへの進化は三者択一、無人発電所に入れるのはかなり後になるので、必然的にかなりのプレイヤーがピカチュウ→ライチュウを使い続けるはずである

(余談だが、弟と一緒にリアルタイムでプレイしていた時、図鑑を最後に埋めたのはサンダースで、身近な友人が誰も持っていなかった。多くのプレイヤーはタマムシの時点で既にピカチュウがいてライチュウに進化させられるため、貴重なイーブイを同じ電気タイプに進化させる人は少なかったのだろうと思う)

「シナリオ攻略中、事実上唯一の電気タイプ」はその後のシリーズにも頻繁に見られる。メリープ、ラクライ、コリンク、シママ、ワンパチあたりは多くのプレイヤーが使い続けていたと思われる。初代のピカチュウと比較すると出現率が高く、積極的に探さなくても遭遇するチャンスが多いが、シナリオ上の役割的にはポストピカチュウと呼ぶべき立ち位置だと考えられる。

交換の葛藤


そんなわけでピカチュウ(多くの人はタマムシの時点で進化させているだろうから、ここからはライチュウと呼ぼう)はパーティの重要な柱として活躍する。進化すると攻撃力が大幅に増えるので、電気技のみならずノーマルや格闘(メガトンパンチや地獄車の技マシンをタマムシで買える)も使いこなすので苦手な相手でも倒していける心強さもある。波乗りによる水上移動では有利な水と飛行(鳥使いがいることを思い出そう)ばかりが出てくるので八面六臂の活躍を見せる。

たどり着いたグレン島。研究所の爺さんに、ライチュウとマルマインの交換を持ちかけられる。赤緑の交換イベントの中でも「その時点でパーティメンバーに入っているポケモン」と交換できる可能性が非常に高い部類である(クチバの「オニスズメ→カモネギ」と匹敵)。交換するか、どうするか…賢明なプレイヤーは一旦セーブして試すだけ試してみるはずだ。

レベルはそのままで同じタイプのポケモンと交換。しかも親は他人なので成長も早い。一見お得に見えるのだが大問題があり、マルマインはまともな攻撃技を持っていない(レベルにもよるが、壁と自爆とスピードスターくらいだろう)!これではどうしようもない。だいたい「おマル」ってなんだよふざけてんのか!すぐにリセットして、冒険の序盤から大事に育てていたライチュウを手元に戻すだろう。ごめんね。

ハナダの洞窟


四天王のカンナ戦や、ワタルやライバルのギャラドス相手に大いに活躍しただろうライチュウ。最後の目的地である名無しの洞窟の最深部に奴はいる。ミュウツー?それもそうだが忘れてはいけないのは野生のライチュウLv64。ゲーム内の野生ポケモンとしてはトップクラスの高レベルである(ちなみにメタモンLv67、同Lv65に次ぐ3位タイ)。

ここまでライチュウを連れ歩いてきたプレイヤーでも、自分のライチュウのレベルがこれを上回るケースは稀だと思われる。今まで育てていたのは無駄だったのか?等と思いながらも、捕獲してステータスを比べて見るはずだ。するとレベルの割に低い能力や、悲惨な技構成(電気ショック、鳴き声、電磁波のみ)を見て、「やっぱり自分が育ててきたライチュウが一番!」であることを再確認するのである。

まとめ


ポケモン赤緑には、ピカチュウを巡る仕掛けが幾重にも張り巡らされている。

  1. ゲーム開始前、説明書を読んだプレイヤーに興味を持たせる
  2. ゲーム序盤で「珍しいポケモン」だとNPCのセリフで語らせて、プレイヤーに欲しがらせる
  3. 仲間にした直後に、電気というタイプは癖が強いが強力であることに気づかせる
  4. 電気タイプのポケモンは複数いるが、シナリオ攻略中の選択肢を事実上ピカチュウ→ライチュウの一本に絞る
  5. ゲーム中盤に海パン野郎や鳥使いを多数配置することで電気タイプを存分に活躍させる
  6. 交換イベントの対象とすることで手放すか否かを葛藤させ、もし交換に出した場合は後悔させてリセットを促す
  7. 最後の最後に「高レベルの野生のライチュウ」とステータスを比較させることで、育成の大切さと愛着を再認識させる


非常によくできている。他のポケモンで適当にこじつけてみてもここまで思いつく例は無いような気がする。少なくないプレイヤーにとって、ライチュウは忘れられないパートナーになるはずである。もっとも最初に遭遇するまでのハードルはやや高く、プレイヤーのRPG適性をやや過大評価している感もある(このあたりは前回の記事とも通じる部分であり、また前述したように続編以降におけるポストピカチュウの出現率が引き上げられたことにも繋がったと考える)。

ともあれ実際にプレイしてピカチュウを連れ回したプレイヤーは、上記の全てに心当たりがなくても、1つくらいは思い当たる節があるのではないだろうか。アニメ化のずっと前からプレイヤーにとってピカチュウは特別なポケモンであり、逆にそうだからこそアニメやグッズで抜擢されたとも言える(ただ、実際はピカチュウよりむしろ最終形であるライチュウに愛着を持つほうが自然であり、それゆえに当時のグッズ等の扱いに違和感があった人も多かったと思うが、それはそれ)。

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すごい深読みですね…
脱帽です。
ナナシの実 | URL | 2020/02/29/Sat 16:45 [編集]
>メリープ、ラクライ、コリンク、シママ、ワンパチあたりは多くのプレイヤーが使い続けていたと思われる。
ピチュー、プラマイ、パチリス、エモンガ、モルペコ……
アイドル枠と実用枠で分けているような感じでしょうかね?
ピカチュウの下位互換なピチューは仕方ないにしても、それ以降のアイドル枠にも何か戦力的な強みが欲しかった気がします。
ASPEAR | URL | 2020/07/25/Sat 12:02 [編集]
パチリスの物拾い兼秘伝要員という独特の立ち位置は好きです。
プラマイは、やりたかったことはわかるけどただでさえ貴重な電気枠を2枠使ってまですることか?って感じでしたね。
かける | URL | 2020/07/25/Sat 17:53 [編集]
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