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温泉卵の思い出
幼少期には特別な食べ物だったはずだが、いつの間にかごく身近になっていた。
いわゆる温泉卵、すなわち白身が半熟状態のゆで卵がある(黄身の状態については好みがあろう)。かつて温泉卵は現在よりも身近な食べ物ではなかった。文字通り実際の温泉の熱で作られるもののみを指し、家庭で再現する方法などは一般に知られていなかった。飲食店でも通常は見られなかったと思う。

僕にとって最も古い温泉卵の記憶は、福島名物の「ラジウム玉子」。文字通りラジウムを含む温泉で調理された卵である(ラジウムの効果については正直眉唾ものであるが)。たまたま近所の人がそちらの出身であり、里帰りに行くたびにお土産に買ってきてくれた。年に数えるほどしか食べられない特別な食べ物である。僕が小学校低学年であった1990年代初頭、少なくともうちの近くでは温泉卵は市販されておらず、「ラジウム玉子」こそが半熟白身の玉子料理だった。

90年代の中盤にはスーパーマーケットで「温泉卵」を見かけるようになった覚えがある。母や祖母と買い物に行くときはよく買ってもらっていた。「ラジウム玉子」と比べると黄身が生に近いものの、付属するタレの味が絶妙で大好きだった。

温泉卵が日常的な卵料理となったきっかけは、O-157等による食中毒の影響だったと記憶している。外食産業で生卵が規制(自主規制?)されるようになり、その代替品として温泉卵を採用する企業が急増。当初は牛丼や月見そばなど、生卵をそのまま置き換えた用途に限られていたと記憶しているが、次第に「温泉卵ハンバーグ」や「温泉卵ミートソーススパゲティ」のように、従来の生卵では考えられなかった分野にも進出するようになった(これらの場合、ポーチドエッグのお手軽な代替品という側面が強いか?)。

今やファミリーレストランでもトッピングとして欠かせない存在になっていることは周知のとおりだが、それもほんの20年程度の歴史である。店舗としては仕込みの時点で用意しやすい(あるいはまとめて買い入れることができる)という点で、洋食界隈では前述のポーチドエッグを完全に駆逐してしまったように思う。家庭用としてもスーパーで購入できたり、あるいは簡単に自作するための器具やレシピが普及し、家庭の卵料理としてもすっかり定着した。

しかし振り返ってみると「沸騰しない程度のお湯で30分ほど保温する」というごく簡単なレシピにも関わらず、長らく一般に知られていなかったのが不思議である。江戸時代の料理書である「卵百珍」(100種類の卵料理を紹介)にも似たような料理は無いようだ。作ろうと思えば江戸時代どころか縄文時代でさえ身近な材料でできそうなのに(大きい器に湯を張って、布や革で保温すれば良い)。まさに料理界における「コロンブスの卵」だったのかな、と、上手いことを言って結びとする。

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