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ファミコンの『MOTHER』を語る
そろそろ30周年らしいので。基本的に最後までプレイした人が対象。あくまでファミコン版の話なので、GBAリメイクしか知らない人とは若干噛み合わないかも知れない。

先に断っておくが、僕は本作のファンというわけではない。しかし嫌いなわけでもない。全体のストーリーだとか、あるいは現代アメリカを舞台としているといったような、本作の特徴としてよく挙げられる点には正直あまり琴線が触れなかった。ゲーマーとしてMOTHERを評価しているのは、ひとえにそのゲームバランスの絶妙さからある。

よく「MOTHER(1作目)はゲームバランスが悪い」と言われる。それは正しくもあり間違いでもある。確かに『ドラゴンクエスト』シリーズ(主に3以降)のように、戦闘による程よい緊張感とレベルアップによる絶妙な成長を楽しめるかと言われれば明らかに否である。まず経験値と仲間の加入タイミングの問題で、主人公とテディ(ブラブラ団ボス)以外の味方キャラは、加入からラストまで非常に弱いままで進行する。そして中盤以降の敵側のインフレに味方の成長が追いつかず、極端なパワーレベリングをしない限りラストダンジョンは1戦ごとに満身創痍になる。快適とは程遠い、過酷なバランスである。

しかし僕は思うのだ。このバランスは意図したものなのではないか?と。最初の仲間(救助のために一時加入するピッピは別として)であるロイドはLv1。今までの冒険により相当レベルが上っている(特に、初見プレイではマジカントで大いに迷うのでLv20超えも珍しくないだろう)主人公と比べるとあまりにも頼りない。防具を固めても簡単に倒されてしまう。戦闘面で役に立つ特殊技能もない。完全に足手まといだが、イベントでは彼が必須となる場面が2箇所存在する。

補足。「彼にしか使えない機械系アイテムもあるじゃないか」と思われた方もいるかも知れない。しかしレーザービームやデスビームはその時点で通常攻撃と大して変わらない威力(そもそも、デスビームの効果がγ(即死)じゃなくてβ(ダメージ)なのは詐欺である)だし、彼の鈍足からねばねばマシンで敵1体をスタン(成功率も高くない)させてもどうしようもない。火炎放射器は強力だが、入手時期が限られている上にノーヒントだと見つけづらい(テディ離脱後に、もはや敵対する集団ではないはずのブラブラ団と無闇に戦いたくないという心理的な理由もある)ため、所詮は攻略情報ありきのアイテムである。問答無用で敵を全滅させるスーパーボムは強力だが、購入によって安定入手できるのはGBAのリメイク版での話である。

話を戻す。2人目の仲間(道に迷うと、彼女の方を先に仲間にするかも知れないが)であるアナは唯一の攻撃系PSYの使い手。特に生物を問答無用で即死(改心)させる「PKビームγ」、それすら効かない機械系の敵を確実に瀕死にする「PKフリーズγ」は非常に強力で、これ無しでのラストダンジョンの攻略は考えたくもない。しかし成長は極めて遅い。PKファイヤー系はこのゲームで最初に使える範囲攻撃だが、覚えた時点で周辺の雑魚を倒すことすらできない(このあたり、DQ2におけるムーンブルクの王女の「バギ」が即戦力となった点と対照的ですらある)。

両名とも、説明書などから受ける期待を大きく裏切るほど使えない。フィジカルエリートの上に超能力も使える主人公一人いればそれで十分じゃねと思ってしまう。しかし主人公には「喘息」という致命的な弱点があり、もしも自動車系の敵の排気ガスによって発症してしまうと戦うことも逃げることもできなくなってしまう。やはり戦闘能力の如何を問わず仲間は必要なのだ。

通常戦闘では依然として1強2弱のまま、砂漠や湿地帯を乗り越えて冒険は進む。荒れ果てた街のライブハウスでギャングを率いるテディに絡まれたりもするが、拳で語り合ってあっさり仲間になる。また変なのが加入するのか…と思わせておいて、強引な展開でロイドと入れ替わったテディは見た目を裏切らない強さを誇る。まず武器からして玩具や日用品ではなくナイフや刀といった本物の凶器を使う。攻撃力も素早さも物凄い勢いで成長し、主人公とのツートップで敵をバシバシなぎ倒していくのは痛快ですらある。

しかしそんなテディも無敵ではない。敵側の巨大ロボとの負けバトルでは瀕死の重傷を負って戦線離脱する。そこで助けに来るのは、かつて彼に戦力外通告されたロイド。ますます強くなる敵を相手に戦力は失われ、本当にラスボスまでたどり着けるのか?という気分にさせてくれる。NPCとして加入する味方の巨大ロボ「イブ」との相打ちで先に進めるものの、周辺のモンスターは極めて強力であり、冒頭でも述べたように1戦ごとに満身創痍、油断するとあっという間に全滅してしまう。そして、以降は味方側のパワーアップはまったくない。今の強さと装備のままで最後まで進むしか無い。レベリングは可能だが、効率は非常に悪いので余程の根気が無ければ無理矢理にでも先に進みたくなるはずだ(ブラブラ団相手に連射放置するという手軽な稼ぎ方はあるが、火炎放射器のところでも述べたように気づきにくい上に抵抗感が強い)。

ここまで来ると、主人公の自慢のパワーも大して役に立たなくなる。彼が終盤最も多用することになる行動はPSI「次元スリップ」による確実な逃走である。単体であればPKビームγやPKフリーズγでなんとか倒せる(余談だが、序盤はさっぱり役に立たなかったレーザービームの出番がここにある。素早さの関係上、アナのフリーズγで瀕死になった敵に対し、ロイドのレーザービームでとどめを刺すという連携が取りやすい)。一方で、壁となるようなボスキャラはいないので、先に進むことだけを考えれば特にレベリング等しなくてもなんとかなるというのも本作の大きな特徴である。

特に、恐るべき打撃力で1ターンに1人を確実に仕留めてくるグリズリーとの戦闘は終盤の目玉と言える。プレイヤー側の最適な行動は次元スリップとPKビームγを同時に選択すること。グリズリーは単体でしか現れず、単体攻撃しかしないので、誰が狙われても逃走か即死のどちらかの効果は発動され、最低限全滅は免れるのである(それにしても宇宙生物や宇宙人のロボットよりも強いグリズリーって何者なんだろう)。

そんな地獄のような戦闘を繰り返して、ついに元凶であるギーグの元にたどり着く。ギーグ自身はぬるい全体攻撃を放つだけなので、道中の雑魚に比べれば大したことはない。特に「サイコシールド」でダメージ半減できることに気づけば全く怖くない。しかし、こちらからいくら攻撃しても一向に倒れる気配はない。このままではジリ貧で負けるかも知れない。すると、いつの間にか見慣れないコマンドが追加されて……。

ラスボス戦を純粋な戦闘ではなく、特殊なコマンドによる演出の場として使用したことに当時は賛否があったらしい。しかし「次第に力押しが通用しなくなってくるゲームバランス」の果てに存在するラスボスのあり方としては、これ以外の形はなかったのではないかと思う(結末はともかく「ラスボス戦を強制負けバトルにする」という悪趣味な演出もありかも知れないが、本当に実行したらクソゲー扱いでは済まないだろう)。

以上のように、MOTHERというゲームは「主人公と仲間たちと敵キャラのパワーバランス」というのが非常に作り込まれている。文字で説明しなくともパラメータやダメージの数値によって主人公が置かれている状況を示唆するという凝った作りになっているのである。何度も言うが快適さには程遠いバランスには間違いなく、それゆえに一般受けはしなかったようで、以降の同シリーズも含めてこれといった後継者は見られないのが惜しい。

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