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初代ポケモン:能力システムの謎
システムを設定したのも凄いが、もっと凄いのはそれを非公開のままにしたことだと思う。
ご存知のように、初代ポケットモンスター(及び、互換性のある金銀)は、当時のRPGとしては非常に複雑なキャラクター成長システムを有している。パラメータとして表示される能力値は計算結果に過ぎず、「種族ごとに設定された基本能力」「個体ごとに設定された生まれながらの素質」「戦闘によって蓄積する能力別の隠し経験値」といった要素(それぞれ一般に「種族値」「個体値」「努力値」と呼ばれる。以下でも使用)から算出される。これによって初期能力や育ち方にばらつきを持たせつつも、種族的な限界は厳密に設定されているという、過去にあまり例のない独特の成長を見せる。

例えば「ドラゴンクエスト」シリーズでは一定の基準値をベースにしたランダム成長で、ドーピングは貴重な反面、無制限に行える(どのキャラも同じ上限まで伸ばせる)という例が多い。「ファイナルファンタジー」では成長パターンにランダム要素がない例が多い。任天堂の「ファイアーエムブレム」ではレベルアップのたびにキャラごと・能力ごとに設定された確率に従って常にランダム成長をする。いずれもキャラ(あるいは職業や種族単位の)ごとの「成長パターン」と、各ユニークキャラごとの「現在の能力値」はあるものの、各ユニークキャラごとの「直接確認できない基本パラメータの内部能力値」を変数として設定している例は、少なくともポケモン以前のゲームでは聞いたことがない(部分的には、例えば「ファイナルファンタジー2」の回避回数や魔法防御回数の熟練度、あるいは「ロマンシング・サガ」シリーズの武器Lvや術Lvは成長段階が不可視だが、攻撃力や防御力などの基本パラメータ全てでやっている例は思いつかず、まして攻略本などで概要すら触れていない例はあるのだろうか)。

過去に例のないシステムを構築したのも凄いのだが、本当に凄いのはこのようなシステムを構築しながらも、詳細についてはほとんど公開しなかったことである。断片的に公開されたのが1998年の春頃(「ポケモンスタジアム」の攻略記事において)で、それまでの2年間はほぼ沈黙を守っていたのである。当時インターネットに触れていない多くのプレイヤーは、1998年に入ってから初めて「レベルアップまでに戦う回数が多いほど強くなる」「倒すポケモンによって能力の上がり方が変わる」という情報を得たのである。それ以前の攻略本では一切見られなかった記述である。

一応、個体値に関してはゲーム内でも「同じポケモンでも捕まえるたびに能力が違う」という形で触れられているが、努力値の存在を匂わせるメッセージは皆無である。「君はポケモンを大事に育てている」と褒める人物はいるが、あくまで賞賛であって「大事に育てれば強くなる」ことは教えてくれない(逆に「大事に育てた」と主張する敵トレーナーがいるが、データ上は他と同様に努力値0で、特に強いわけではない)。

努力値に関する情報源はもっぱら攻略本となるわけだが、その内容はごく限られていた。参考までに各種のアドバイスについて、最も早い時期に言及した攻略本を挙げる。
ドーピングは早いうちに行うとよい→ポケットモンスターを遊びつくす本(1996年7月、KTC)
育て屋でレベルを上げると弱い→強いポケモンの育て方(1997年8月、T2出版)
なるべく低いレベルから育てるとよい→ポケットモンスター大百科2(1997年11月、エニックス)

この時点では「たくさん戦えば強くなる」という説明はまだ見られない。それどころか「強いポケモンの育て方」においては、交換を利用するなどして効率よく経験値を入れることを推奨しており、努力値システムを下敷きにした解説ではない(つまり、情報規制で載せられないわけではない)ようである。メーカーからの情報提供というよりは、プレイヤーとしての経験則から導き出したアドバイスだと考えられる。

時系列的には97年5月には最初の公式大会が告知され、メーカー側は従来よりもう少し具体的な育成アドバイスを公開してモチベーションを高めることもできたはずなのだが、少なくともこの時期の攻略本を読む限りは踏み込んだ説明は見られない。ちなみにネット上においては、hiwasa氏のサイトにて遅くとも97年12月までには詳細が判明している。

よく知られた開発中のエピソードとして「ニックネーム機能を残すか、ポケモンの保有数を増やすか」の決断に迫られたというものがある。しかし単純に考えても、1バイト*5文字のニックネームよりも、2バイト*5能力の努力値のほうがはるかに容量を食う。ニックネームあるいは保有数を犠牲にしてでも守ろうとしたのであれば相当思い入れのあるシステムだろうし、あるいは当初は努力値システムは存在しなかったが開発後期(ニックネームと保有数の両立が可能になった以降)に余ったRAM容量を活用する形で入れたのかも知れない。

いずれにせよ、相当に手の込んだシステムであり思い入れも強いはずなのだが、それだけに長いあいだ断片すら公開されない状態が続いたのが不思議なのである。もっともこれはシステムや開発事情を知っているファンだからこその発想であり、本来は表に出るべきではない裏方の仕事だと割り切っていたのだろうか。たまたまポケモンというゲームが超ロングヒットし、なおかつ通信対戦という要素があったからこそ部分的とはいえ明かされることになったのだが、あくまで結果に過ぎない。

このようなポケモンのケースは幸運な例外だと思われる。ほとんどのゲーム作品では能力システムの詳細はゲーム内や攻略本などでは明かされない。上で挙げたような別ゲームの例も、ずっと後になってからネット上で解析情報を公開・共有したという例がほとんどであり、それも人気タイトルだからこそ需要があったのだ。ほとんどのゲームソフトはまともに解析すらされない。世の中にはポケモン並みに複雑かつ不可視の能力システムが設定されたにも関わらず、それが日の目を見ないまま忘れられたしまった例も多数あるに違いない

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NNは1バイト*5文字で、努力値は2バイト*5能力では?
NNには終端子も含まれるため実際は6文字ですがまあ…

努力値が開発後期に追加された説は、ゲーム内に努力値の存在を匂わせるメッセージが見つからない事実とも整合しますね。
タイプ一致技のダメージに1.5倍ボーナスがかかる件もそうなんでしょうかねえ?

最後のくだりで、GBAソフト「ゾイドサーガ フューザーズ」(シリーズ3作目)のダメージ計算式が未解明なことを思い出しました。
攻撃と防御の単純な減算である2作目とDS版、おおむね除算で決まる1作目と違い、防御に対して3次関数が使われているような感じはしたのですが、私のスキルでは詳細な解析はできずじまいでした。
ちょっと英語でググってはみたんですが、ダメージ計算の解析結果は見つかりませんでした……英語化パッチは見つかったので、何らかの解析は行われているはずなんですが。

実際、プレイ人数が多く、通信対戦によりレベルを上げるだけでは勝てない領域が存在し、さらに配布などの限定要素があるポケモンは、非常に解析者を呼びやすい/育てやすい性質を持っているんだと思います。
チートを糾弾する声も多く、確かにその主張も理解はできるのですが、主張者たちはこういう背景を理解しているのかな?という疑問は、つい持ってしまいます。
ASPEAR | URL | 2018/06/23/Sat 16:15 [編集]
あ、16進数1桁=1バイトだと勘違いしてました。後で直します。

タイプ一致補正後付け説はどうでしょうね。
一応ゲーム内でも、バブル光線を水タイプに覚えさせてと言うカスミのセリフ等で匂わせていなくもない感じ。
バランス的な話をすると、一致補正を得られないために能力を生かしきれないポケモンが少なくないことも裏付けと言えるかも。
特にカイロスとストライクの扱いとか…

解析の有無を問わず、マイナーゲームだとちょっと頑張れば攻略の第一人者になれたりする楽しみがありますね。
特に広告ビジネスとしての攻略サイト運営では知名度の低いゲームは見向きもされない傾向にあります。
かける | URL | 2018/06/25/Mon 16:22 [編集]
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