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初代ポケモンの対戦ゲームとしての評価
VC配信に伴い、本気で考察したり単純に思い出を語る人が増えた。彼らは口を揃えて「初代は対戦ゲームとしてバランスが非常に悪かった」というが……
まず前提として、ポケモンのようなシステムで対人戦を実現し、成功した例というのは今までにない。少なくとも僕は知らない。具体的には「プレイヤーが任意で選択・強化したキャラクターを使った」「アクション性のない」戦闘システムという2点から成り立つ対人戦でまともに評価されていたコンピュータゲームを指す。

実例自体はあった。同じゲームボーイソフトでも、以前の記事で紹介した「ウィザードリィ外伝3」がそれだ。他にも「女神転生外伝 ラストバイブル」がポケモン以前に通信対戦に対応している。いずれも根強いファン層が存在するシリーズだが、対戦モードを評価する声はあまり聞かない。プレイヤーの絶対数が少ないのでマッチングが困難だったという事情があるにせよ、それ以前に対人戦を想定したゲームデザインで無かったのではないか。未プレイなのであまり大きな事は言えないが。

翻ってポケモンはどうか。細かい部分で従来のRPGとは異なり、対人戦を前提としたかのような部分がかなり見受けられる。まず戦闘は基本的に1vs1で、パーティメンバーがいても同時に戦うことが出来ないという点。これだけでもかなり特殊なシステムである。パーティを組まずに主人公キャラだけが戦うゲームはあったが、パーティを組んでも戦闘自体は1vs1というのは非常に独特である。このシステムのおかげで、どれほどの火力を有していても1ターンに出来ることは目の前の敵1体を倒せるだけになる。

旧来のRPGのフォーマットで、パーティ同士が正面対決する対人戦がどれほど大味になってしまうのかは、後発の「ドラゴンクエストモンスターズ」を見れば明らかであろう。もちろんやり方次第ではパーティ同士の対戦でも面白く作ることは出来るかも知れないが、元々は対人戦を前提としなかった旧来のシステムを調整するよりは、新しいものを構築することを選んだのだろう。むしろポケモンバトルというものが作中世界で競技性を帯びているということもあり、勝ち抜きやタッチ交代のイメージから対人戦の有無に関わらず最初から想定されていた戦闘システムという可能性も高い。

他にも例えば「技を4つしか覚えられない」というのも相当変わっているシステムである。装備品スロットや、選択して覚えさせる技ならまだしも、自力で覚える技ですらも全て残せないというゲームは珍しい。技1つでたかだか2バイトの情報なので、容量の都合とも思えない。対戦を面白くするための調整だろう。技が少ないということは1匹で出来る事が限られるということだし、選択の幅があるということは敵に回したときに何をしてくるかわからないという事でもある。

まだある。初代の対戦はトップメタが偏りがちだが、ケンタロスは耐性を持たない。フーディンはエスパー以外の攻撃手段も眠り技も使えない。細かいところではサンダースが他の多くの電気タイプのように「嫌な音」を覚えない。どんなに強くても一つは欠けたところがある絶妙な調整のように思える。唯一ミュウツーだけは本当に欠陥無しに強い特別な存在だが、クリア後の最強キャラという位置付け自体は問題無いだろう。

総合的に見ると、開発の終盤で間に合わせに作った(と、インタビューなどでは紹介されている)割にはかなり出来が良いシステムで、これをもってバランス破綻とか未完成だとか、後世の基準で評価するのはいささか傲慢に過ぎるような気がする。少なくともポケモン以前のRPGと比べれば遥かに対戦向けに仕上がったシステムであることには間違いないのだ。

(個人的には、初代のゲームバランスの最大の問題点はよく言われるエスパーよりむしろ「氷タイプ」の攻撃面が強すぎる事だと思う。単に「吹雪」がヤバイという次元ではなく、氷タイプの相性面での有効性、技性能の良さ、そして覚えられるポケモンの質と量が異常。水タイプは例外なく覚えられること、草タイプの技の貧弱さもあり、草水火の三竦みを完全に否定してしまっている。同じく相性面で強烈な岩タイプは、技の性能や習得条件が足かせとなっているのだが氷はそんなの気にしない、ヤバイ。)

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(以下とっちらかし、そのうち別の記事にまとめ直すかも)

RPGに限らないが、一般的にゲームに登場する「敵」は倒されるために存在している。特に戦略SLGで見られるが、一見するとパラメータや物量で圧倒している相手を、こちらの乏しい戦力で工夫して倒すという方向のデザインが多い。なぜ数値で勝る相手に勝てるのか?といえば、それは単純に敵が馬鹿だから、つまりルーチンが単純だからに他ならない。SLGの対人モードがいまいち盛り上がらないのはこのためで、まともに思考するプレイヤー同士では膠着状態になりやすく、それを打破するために運頼みな展開になりやすい。NPC戦が面白いゲームは、そのNPCをPCに置き換えても面白いままとは限らない。

例えば「将棋」「囲碁」レベルにまで洗練されれば同条件での実力勝負も面白くなるのだが、その域に到達するのは非常に困難であり、またシステムの完成度は、「そのシステムで遊ぶゲーム」そのものの完成度にとってはあくまで一部しか無い。

もう一つ、対人要素で成功したのは「桃太郎電鉄」等に代表されるパーティゲームの類だが、こちらは勝ち負けよりもプレイを楽しむことに主眼が当てられている。

ポケモンの場合、アクションでもパーティでも無い形で対人戦を成功させた希有な例である。

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