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書評:君は宮崎勤をどう見るか
宮崎勤事件に関するリアルタイムな事件評。新聞や雑誌のコメント分析や、事件に寄せた子供たちの反応など。

宮崎勤。ある世代以上、特にいわゆる「オタク」と呼ばれる人達にとっては半ばトラウマとなった名前だろう。有名な「10万人の宮崎勤」発言がさも事実であるかのように語られていたように。僕はといえば事件当時僕は小学1年生だったが、事件に関するリアルタイムの記憶は無い。ずっと後になって「酒鬼薔薇」事件の際に引き合いに出されて存在を知った程度だ。

自分語りはこのくらいにして本題に入る。国語作文研究所を開いて児童・生徒達に作文を通じた教育を行っている著者による事件の分析である。発行されたのは89年末で、まだ宮崎が「容疑者」だった頃。4章構成で、第1章は新聞や雑誌に掲載されたコメントの分析。第2章は教え子達による事件の感想、第3章は宮崎勤の文章(犯行声明文ではなく、子供の頃の作文や大人になってからのビデオ交換の手紙)の分析で、第4章は事件そのものへの筆者の分析でまとめる。

第1章は犯行声明から逮捕以後まで、事件を追いかけつつ新聞などからコメントを拾っている。詳細な日付こそ無いが、掲載紙及び執筆者名は明記。また時系列ごとに事件以外の国内外の出来事にも簡単に触れている。今日の目で見ると貴重な資料。主観は混じるものの、感情的ものや支離滅裂なコメントに対する批判などは妥当なところだろう。

第2章にある教え子達の反応は恐らくこの本のメイン。小中学生(下はなんと小学2年生!)に、タブー無く自由に事件の感想を書いてもらったものである。事件の被害者になり得たかも知れない女子から同情的な意見が寄せられていたのが印象的だ。異常性を断ずるマスコミに対する冷静な見方にも驚かされる。それらに対する著者のコメントに見られる教え子自慢は、凄惨な事件が題材でありながらどこか微笑ましい。

第3章は宮崎勤の文章の分析。幼少期から自己を確立して物事を客観的に捉える力を持ちながらも、周囲との関係が徐々に上手く行かなくなって自己の壁に捕らわれてしまったというのが主な論調。引き合いに出されたのは小学校の頃の作文3点と、ビデオ交換の手紙2点だけなので、そこから読みとるものとしては少々の飛躍を感じたが。

第4章の事件分析ではさらに飛躍を感じる。自由と豊さの中で無目的化した若者による犯罪、いわば環境が犯罪を産んだという見方に共感は出来ても論理的には微妙なところ。一部のコメントを国民感情のように扱っているのも気になるところだ。宮崎は特別な存在ではなく悲劇は繰り返されうる、それを抑止するために新しい価値観の中での教育こそが大事という結論は、確かにその通りではあるのだろうが。

全体的に見ると少々出すのが早かったように思える本。後半がやや飛ばし気味。とはいえ、子供と共にある現場から見た貴重な同時代の資料には間違いない。

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