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書評:それぞれのファン研究
それぞれのファン(オタク)自身によるファンの研究。6人がそれぞれ別ジャンルを担当。

日本のポップカルチャーにおける「ファン」とは何か。自分自身もファンである6人がそれぞれの論を展開。テーマはコミケ・ボーイズラブ・エロゲー・格闘技・宝塚・ジャニーズという、一見すると共通点があるんだかないんだかわからないチョイスだが……・お互いの論に言及している部分もあるが、基本的には独立した論文なので、ざっくりと別個にレビュー。

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ファンダムの場を作るということ (玉川博章)

創立から現状に至るまでのコミックマーケット(コミケ)の話。主にスタッフに関する話がメイン。今や数十万人が参加するイベントだが、原則としてボランティアのスタッフによって回されているというのに驚き。スタッフ自身がコミケそのものを趣味としているのだ。コミケという環境を作ることに心血を注いだ世代と、維持が目的になっている現世代の隔たりなどに触れてはいるが、基本的にきれいな話ばかりなのが物足りなかったかも。

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「二次創作」活動とそのネットワークについて (名藤多香子)

ボーイズラブと、そのファンであるいわゆる「腐女子」。ファンの中でも自ら創作に携わる者が多いジャンルだという。また、なぜかこの分野は内外からの分析を酷く嫌うという。以前うちでもレビューしたオタク女子研究にも言及しつつ、内部から論じようとした者はバッシングされる傾向にあり、「腐女子」の代表たる人物は現れづらい状況らしい。その一因としてある種の後ろめたさにも触れている。自分たちの環境を守るための鉄の掟の存在など、端から見ると面倒そうな世界だなあ。

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ゲーマーはエロと戯れるか? (小林義寛)

パソコンのエロゲー(アダルトゲーム)について。PC98時代から現在まで。きわめて個人的な内容であり、匿名の知人の話を使いつつ当時を振り返る。正直、当時のエロゲーに興味がないのであまり面白くなかった。昔はまともにプレイするにも環境設定などの知識が必要だったというが、これはエロに限った話でもないだろう。エロ目当てでプレイするよりもコンプリートに熱くなるような話も、やはり昨今のあらゆるゲームジャンルに見られることだし。

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”ナチュラル”ボディを手に入れる (岡井崇之)

かつてのプロレスから現在の総合格闘技まで、あらゆる格闘技のファンの話。虚構とリアルが複雑に交差していた「物語」重視のプロレスファンと、試合内容や選手個人のデータに凝る総合格闘技ファン。自らもジムに通って体を鍛えるようなファンについて、いわゆる「オタク」とは遠い存在に思えるが、自らの肉体をパラメータ化してストイックに鍛える様は、自らの肉体のデータベース化であって収集行為にも似ていると指摘。野蛮な暴力性やマッチョ信仰とは一線を画しているのか。

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女同士が見せる夢-ファンは宝塚をどう見ているか- (東園子)

女が惚れる女の代表である宝塚女優。彼女らの魅力は、演劇内での役と平行して「宝塚女優」という役を二重に演じ続けるところ。男性との恋愛関係が存在しない(少なくとも表には出さない)女性のみの純粋な絆に惹かれるのだという。常に男性との関係が優先される女性同士のホモソーシャルがはっきり現れる貴重な空間。ファンが女優を見る目は、あたかも友人や親戚に向けるような静かで優しいものらしい。宝塚ファンはこの本で取り上げられる女性オタクの中では一番成熟しているような印象を受けたなあ。

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関係性の楽園/地獄 (辻泉)

ジャニーズファンの間で飛び交う(1990年代に飛び交っていた)他のファンをこき下ろす怪文書の話から始まる。怖い。心地の良い関係性を守るために、それを脅かす存在は徹底して排除する。男から見た嫌な女というものをこれでもかというくらい感じさせる。はっきりってこの本の中では一番言いたい放題言っているような印象。内部からの批判を覚悟していた腐女子論よりやばいぞこれ。自らの魅力に自信がないからこそ関係性を求める、とかよく書けるなあと。

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全体的にはとにかく自由奔放な印象。もともと部数は多く無さそうだが、よく書籍として出版されたなぁと。興味の無い分野についても楽しく読み進められた。

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