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書評:狂気の山脈(漫画版)
ラヴクラフトの名作、「狂気の山脈にて」を漫画化。

ラヴクラフト作品の中は一番好きな話のコミカライズということで購入。漫画で読むとずいぶんテンポのいい話になるんだな。

まず作画について。よくある「絵はきれいだけどアクションが苦手」という感じ。登場人物達はなぜか日本人っぽいデザインにされている。感情移入しやすくするため?あと原作通り「レーリヒの絵画のような」と言わせておきながら、実際のレーリヒの絵画と見比べてみると全然違う。そもそも山脈が鋭角すぎて嘘っぽい。後半の冒険シーンなどは絵にするとどうしても貧弱に見えるが、これは誰が描いても大差のないところだろうから仕方なさそう。壁画はもう少し頑張って欲しかったところだが。

次は話の内容について。もともと長編の作品を漫画1冊に収めるためにはそれなりの省略が必要なのはわかる。しかし、ありもしない台詞を喋らせるのはいかがなものか。「古のもの」もまた「人間」であったことを知る重要な場面で、なぜ「あいつらは俺たちの仲間を殺した醜い化け物、それが全てだ」なんて台詞を喋らせるのか。台無しだ。作画は許せてもこれだけは許せない。本気でセンスを疑った。

というわけで、原作の漫画化としてはいまいち。本書の真髄は原作に関する雑学コラムにある。当時の南極探検の歴史や、南極を舞台にしたフィクションやオカルト説の概要がわかる。南極が未知の世界だった時代ゆえにリアリティのある作品だったのだろう。巻末にはアーサー・C・クラークのパロディ「陰気な山脈にて」を収録。これは貴重。クラークってこういう話も書ける人だったんだ。

メインとなる漫画は原作ファンにはおすすめしないが、それ以外の部分は読んで損無し。なんとも奇妙な評価だが。

関連書評:ラヴクラフト全集4(原作を収録)

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