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書評:宇宙の孤児
乗組員に目的を忘れられた世代宇宙船が舞台。


長期にわたる恒星間飛行のために宇宙船の中で世代を重ねるうちに、反乱が起こって当初の目的が失われてしまった。船員は船の中が世界の全てだと信じていたが、やがてこの世界の真の姿に気づく一人の若者が現れる。

地球から独立して世代を重ねるうちに、独自の言い回し(「グッド・イーティング」とか実際に使ってみたい)や文化が発達した世界。社会的には封建時代に退行してしまったかのようで、物理学などの知識が宗教上の方便だと解釈されているのが面白い。閉鎖系の宇宙船内において不要物を「転換炉」の燃料として消費する設定にはやや疑問を感じたが、展開上の必然性はあるからまあいいか。

世界は船の全てだと疑わなかった主人公らが、想像すら出来なかった「外」の世界を知る場面はまさにSF的なセンスオブワンダー。こういうシーンが見たくてSF読んでるんだよなあ、とあらためて思った。独自の発展を遂げた船内社会、そこから見られる現実社会への風刺、個性的な奇形人のミューティ、血生臭い反乱と裏切りなど、部分部分を切り出しても短編小説として通用しそうなほど見所が多い。

終盤はやや駆け足気味だったかな?と思う。ミューティに感情移入してたからよけいにそう感じたのかも。でも全体としては非常に面白くて、ページをめくる手が止まらなかった。

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