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書評:ひと夏の経験値
TRPGのプレイヤーを主人公にした異色ラブストーリー。インドア男子必見。

主人公は男子高校に通うTRPG歴1年の少年。いつものように男友達と公民館でTRPGで遊んでいたら可愛い女の子がやってくる。彼女が滞在する夏休みの間だけ、4週続きのキャンペーンマスターになることを宣言するのだが……。何かが変わるかも知れないひと夏の青春。

物語は現実のパートと、プレイ中のTRPGのリプレイ風パートが交互に展開される。TRPGパートは極力平易な表現を使い、キャラクターとプレイヤーのキャラが違和感なく結びつくように作られている。TRPGどころかファンタジーものに馴染みが薄い人でも割と読みやすいのではないだろうか。話のテンポも非常によく、特にTRPGパートはかなり割愛されて概要だけになっている部分もあって勿体ないくらい。

メインとなるTRPGこそ架空のもの(少なくともタイトルは伏せられている)だが、実在するTRPGやボードゲームが多数登場。経験者は親近感が沸くのではないか。ブログ主はTRPGは全くの未経験だが、公民館を使ったゲームのオフ会は何度も経験しているので共感する部分が多い。インドアで恋愛に奥手だった男性の立場から見た、男中心のコミュニティにおける女性参加者にまつわるあれこれも当時の自分を思い出す。

荒削りな自作のストーリーで盛り上げようとするが、なかなか思うとおりにいかずアドリブを駆使し、プロットの穴をベテランから指摘され、それに納得しつつも心の中でちょっと反発する。ああTRPGってこういうものなんだな。少なくとも門外漢に「それっぽさ」を感じさせる描写だった。

男ばかりの集団で媚び媚びな態度をとる女の子、そんな女目当てでやってくる男ども。そんな連中を見下して硬派なプレイヤーを気取るも、やはり自分も女の子に興味があって、でも好きなことを伝えられない。そんな自分の不甲斐なさと、その不甲斐なさを女の子も感じているであろうことを自ら理解しながらも、積極的な行動に踏み出せない。非常に甘酸っぱい感情にとても共感。

一人称視点の上に心理描写がくどくて、それがかえって生々しい。本筋には絡まないのに体育会系に対するコンプレックスをつぶやいたり、TRPGを抜けて恋愛に走ったかつての仲間に対する複雑な気持ちとかはまっすぐ読めないレベル。正直、エピローグはちょっと蛇足な感じもしたんだけど、少しくらいはカタルシスがあってもいいんじゃないかな、とも思った。

ジャンル問わず、「割とモテない同性ばかりのコミュニティに没頭した青春」を送ったことのある人であれば少なからず感情移入できるんじゃないかな。最後に解説より一文を引用。「アツいぜ、この草食野郎ども!」

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