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書評:ラヴクラフト全集3
ラヴクラフトの小説集その3。5つの短編と3つの中長編。

今回は短編が多め。他の作品の原型になっていたり、部分的に共通する要素を持っていたり、明確にリンクしているような話が多い。

ダゴン
「クトゥルフの呼び声」の原型になったっぽい短編。あちらのラストだけ抜き出してシンプルにした感じ。このせいかどうかしらないけど、生物としてのクトゥルフとダゴンを混同してる人も結構いるんじゃないかな。具体的な姿を描写していない分だけ恐怖感がある。最後の一節は声に出して読みたいラヴクラフトの筆頭候補。

家の中の絵
アメリカの田舎をボロクソに書いてるけどいいのかなぁ。よく言及される黒人差別よりも酷い差別意識を感じるぞ。ラヴクラフト節が全開だけど、プロットはシンプルというか伝統的な話。日本だと山姥伝説に近いものがあるだろう。

無名都市
エイリアンの遺跡に偶然入り込んでしまった!という、いくつかの作品で肝に使われている要素を単品で抜き出したような話。前後の話がない分だけふわふわして不思議な雰囲気。この都市に関しては他の作品中でも言及されるので覚えておくと吉。

棲み潜む恐怖
本格的な怪奇冒険ものといったところ。化け物の正体がなかなか掴めないので緊迫感がある。正体判明時は「そりゃねーよ」と思ったが。物語としてはしっかり決着が付くので読後感はいいと思う。

アウトサイダー
終始、夢の中のような空気の中で話が進む。塔をよじ登ったと思ったら地上の建物だった?というあたりは特に夢にありがちな光景といったところ。他とは一味違う時代がかった文体で訳されているのも雰囲気出るなあ。

戸口にあらわれたもの
まず結末から書き始めるのがラヴクラフト作品らしい。全集を通して貴重な女の子が登場!と思ったら中の人は…。身近な人間が悲惨なことになる、なかなか悲しい話。

呪われた先祖による肉体の乗っ取りという題材は他の作品でも繰り返し見られる。なお精神交換というのも重要なガジェットなので覚えておこう。

闇をさまようもの
夕暮れの薄闇の中で展開される不思議な出来事。うっかり過去の秘密を解き放ってしまうという点では、舞台は異なるけど「クトゥルフの呼び声」などと共通している部分がある。最後まで謎が謎のままで終わるのも不気味。

「輝くトラペゾヘドロン」は声に出して読みたいラヴクラフト。見栄えも語呂もいいから他作品で使われることも多いとか。

時間からの影
本格的SF。時間旅行がテーマだが、肉体ではなく精神のみが時を飛び越えるというのが面白い。大いなる種族の暮らしぶりはラヴクラフト式の理想郷かも知れない。文明が進んでも記録文書は直接ペン書き、というのは今見るとちょっとおかしい。

ラストの衝撃は見え見えの展開とはいえ、一気に読ませる迫力ある文章だ。

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