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書評:ラヴクラフト全集1
ラヴクラフトの小説集その1。4つの小説を収録。

一般にコズミックホラーというジャンルで呼ばれることが多いが、現代日本人にとっては「ホラー」な要素はあまりないんじゃないかという気がする。SF的なセンス・オブ・ワンダーこそあれど。

ちなみにブログ主はラヴクラフト全集は一通り読んでいるが、後に「クトゥルフ神話」として体系付けられた派生創作群には(最初に全集を読んだ時点では)全く触れていない。記事内ではあくまでラヴクラフトの小説自体を単独で読みっていることをあらかじめ断っておく。以下、1巻に収められた4編の小説を個別にレビュー。

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インスマウスの影

海洋生物や異人種に対する恐怖感や血統コンプレックスといった、いかにもラヴクラフトっぽい要素がいきなり前面に出てくる。宿でのアクションシーンといい、最後のどんでん返しといい、エンターテイメントとしての完成度も高い。

一人称視点の主人公によって異形の化け物に対してさんざんな言い方をされてるが、単純に忌むべき人類の敵というわけではない、というのがいい。個人的にはラストもバッドエンドでは無いと思う。

後の作品にも登場する用語が多数登場するが、現時点では体系を読みとることができず、狂気の演出する小道具のような扱い。

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壁のなかの鼠

こちらも血統コンプレックスがテーマのひとつ。前の話のラストから続けて読むとなかなか衝撃的な出だし。ヨーロッパの土着宗教に対する嫌悪感はプロテスタント的な世界観なのかな。よくわからないけど。

ラストの急展開と比較して、そこの至るまでのテンポが悪くて、全体としてあまり好きになれなかった話。謎の地下洞窟の探索は冒険小説みたいな楽しさがあるけれど。

化石人類学の知識が、時代背景を考慮してもちょっとお粗末な気がした。こんな短期間で姿形が変わってたまるか。当時の時事ネタであるピルトダウン人を出してみたかっただけと違うか。

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死体安置所にて

箸休めというかページの埋め合わせのような短編。ちょっとした小咄のような作品で、独自の固有名詞は登場しない。

この作品に関してはあまり書くことはない。敢えて言えば、最後を「オチ」とするまでに余計なことを書きすぎてる気がする。

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闇に囁くもの

「宇宙からの驚異」という現代でも定番の要素が、米国内にすら未だ残る未知の山林というやや前時代的な要素と結びつくのが面白い。「メイ=ゴウ」と呼ばれる、甲殻類だなんか菌類なんだか無機物なんだかよくわからない生物も、文章だけではすんなり姿を想像できない凝った造形でなかなか楽しい。

文通で手に入る断片的な情報、謎の妨害工作、ついには怪しすぎる手紙を真に受けて直接会いに行く展開に。話のテンポも良くて、最後までページの進みが早い作品だった。1巻の中では一番好きな話。エイクリーの言うことは真実だったのか、ただの狂言だったのか、またいずれにしても目的は何だったのかが最後までわからないというのが、かえって不気味さを増幅させている。

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