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書評:変体少女文字の研究
昭和末期における、いわゆる「丸文字」についての研究。


タイトルホイホイだが「変態」ではなく「変体」である。少女による変わった書体の文字、すなわち「丸文字」が本書のテーマだ。1980年頃から出現し、全国に急速に広まった丸文字とは何なのか。テストの答案、ラブホテルのノート、さらにはお寺の想い出帳などからサンプルを集め、少女に人気の漫画家や文具会社などから取材した、本気で丸文字を研究した恐らく最初で最後の書。

裏表紙の解説で「弱々しくて幼稚な社会」の到来を予感し、「男文化が後退」することをぼやいているから、腐ったミソジニストが書いた本かと思いきや、中身は結構冷静な分析だったので良い意味で裏切られた。

丸文字について調査を進めるうち、この書体が意外にも実用的なものであることがわかる。(当時はまだ折れやすかった)シャープペンの芯を折らないためにペンを垂直に持ち、横文字を素早く書く上では、実に理に適った書体である、と。女子の間でばかり普及したのも、男子と比べて日記や手紙などで文字を読み書きする機会が多いので、効率化の要求と相互の影響力が強かったためか。

巻末にて筆者は、21世紀は誰もが丸文字のような字を書くようになると予想しているが、実際はそうなってはいない。それどころか当の少女たちの間でも、当時ほど変わった文字は筆記されていないのではないだろうか。個人的な見解では、パソコンや携帯電話の普及によって「書く」機会そのものが減ってしまったからだと考える。今世紀初頭ににわかに流行った「ギャル文字」などは、外から見ると丸文字と同じような読みづらい文字だが、実用性に立脚していないという点で全くの別物である。

必要だから生まれ、不要になったから消えてしまった丸文字。自分たちの目的に沿った文字を自ら創作して、それをあっという間に広めてしまう女の子達のパワーに素直に感動した。変わりゆく時代に適応する女性の逞しさ、流行の言葉で言えば「女子力」を感じる。

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