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書評:豚のPちゃんと32人の小学生
学校で豚を飼ってみよう!という思いつきから始まった900日のノンフィクション。


「小学生が豚を飼い、クラスみんなで世話をして、最後はどうするか悩んだ挙げ句に食肉にすることを選んだ」という話自体は有名で、ブログ主も小学生時代に担任から聞かされた覚えがある(授業の合間の与太話としてだったと思う)。それ以来、「ペットと肉用家畜の区別も曖昧なまま飼わせて子供にトラウマを植え付けた失敗談」程度の認識だったのだが、この本を読んで実状を知るとそんなに単純な話では無いことがわかった。当事者である教諭自身が数年越しに出したのがこの本。

舞台は大阪の能勢。唐突に豚を飼うことを決めることから始まり、豚の調達、児童の手による廃材利用の豚小屋の建設、餌の残飯を確保するために近隣の老人ホームとの連携など、風呂敷はどんどん広がってゆく。

食を知る上で、給食に使われている食材を調べる。化学調味料とは何たるかを知るためにメーカーの人を呼ぶ。何も知らないのに何となく危険だと思っている人って多いんだなあ、と実感。メーカーは広報活動をもっと頑張れ。さらには、プロを招いての豚足などの「豚らしい部位」が残った肉を使った本格的な調理実習(教諭の友人の中国料理人を招く本格派)を行ったり、さらには食肉工場の見学といった、地域的にかなりきわどいであろう授業まで行う。

若い読者のために説明するが、この話の舞台となったのは1990代前半。小学校の科目に「総合的な学習」なんてものが導入される10年近くも前の話である。「食育」なんて言葉も(少なくとも一般的な言葉では)無かったと思う。そう考えるといかに先進的な取り組みだったかがわかるだろう。こんな授業を受けてみたかったなあ、と思っていた。……途中までは。

肉とするかペットとするか曖昧なまま月日は過ぎ、やがて3年がたって児童達に卒業が迫り、「Pちゃん」の処遇を決めなければならなくなる。正直、ここから先の展開はぐだぐだ。下級生への引継を行ったりしながらも、肉にするか学校で飼い続けるかの意見がわかれ、最後は先生の一票で食肉センターに送ることが決まる。しかもその理由を尋ねられると「今わからない、ごめんね」と。もうアホかとバカかと。3年間も児童と学校と保護者を巻き込みながら何をやっていたんだお前は。

食肉センターに送ったらそれっきりで、直接児童達が肉を食べることもない。食肉としての適齢期を大幅に過ぎた豚に商品価値が与えられたのかすら怪しい。

結局、最後まで読み終わったら読む前に抱いていたイメージに戻ってしまった。所詮は無能な教諭の失敗談に過ぎないのである。ブログ主は基本的に「先生」という職業には同情的だ。親族や友人に教職者が多く、普通の人間である彼らと、「先生」を特別視する世間の目のギャップの苦しさも他人事ながら感じている。それでもこの黒田恭史センセイには全力で突っ込ませてもらう。アホかお前は。

もっとも、そういった失敗談を本にして出版した功績は評価したい。同じ轍を踏むバカはいないと信じる。風呂敷を広げるのは簡単だが、畳むのはいかに難しいか、という一つの例でもあろう。ところで本書では児童の名前を実名で、「くん」とか「さん」も付けずに表記していたのは、一人の人格を認めているようでちょっと好感だったな。

何にせよ、我々は他の命の上に成り立っている、ということを、時々でもいいから思い出すのは大事なことだと思う。感謝しつつ今日もEat The Meat!

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モンスターハンターでは、獲物としての豚と愛玩用の豚が別種族扱いとなっている。この本を読んでいたら思い出してしまったので無関係は承知でリンクを追加。

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